日本で流通しているスイスの旅行ガイドには「ベルニナ急行に乗車するには予約が必要です」と注意書きされているものが少なくありません。が、これは半分正しく、半分間違っています。

<ベルニナ峠を行くベルニナ急行>
これは、そもそもBernena Expressという言葉が、いったい何を指しているのか、の解釈によるものです。
ベルニナ線は、スイス最大の狭軌私鉄である
レーティッシュ鉄道[RhB; Rhätische Bahn]の南の端に位置し、ポントレジーナ[Pontresina]からイタリアのティラノ[Tirano]までを結ぶ国際線です。
北側(つまりスイス側)の始発駅は、ポントレジーナ以北のデルタ線によってサンクトモリッツ[St.Moritz]とサメイデン[Samedan](さらにその北)と分岐しますが、ここを走っている列車は概ね以下の2つの運用に区分して考えることが出来ます。

<ベルニナ線の運用2種>
ベルニナ線の列車は、基本的にすべて動力車2両の重連に客車(ときに貨車も)を連ねて運行されます。動力車は、通常は客室付(ABe4/4IIまたはIII)ですが、機関車(Gem4/4)が混じる場合もあります。

<Gem4/4(左)とABe4/4IIの重連の例>
上掲模式図の上段が速達列車、いわゆる“広義のベルニナ急行”であり、下段が各駅停車になります。そして、ガイドブックで「予約が必要」とされる“狭義のベルニナ急行”は、速達列車の客車部分=スイスで“パノラマ客車”と呼ばれる窓が天井まで切れ上がった車両を言います。

<ベルニナ線のパノラマ客車>
従って、予約なしでもABe4/4動力車にであれば乗れる、ということになります。事実、図にも示しているように、速達列車については動力車部分に対してはRE16xx(REはRegional Expressの意)、客車部分に対してはD9xxというように、異なる列車番号が割り当てられています。これが、冒頭に“半分正しく、半分間違っている”と書いた理由です。パノラマ客車に乗るには座席指定予約が必要ですが、同じダイヤで走る列車には飛び込みでも乗れる、というワケ。
いや、実は空いてさえ要れば、車掌に断りを入れて乗ることも出来るんですけど(実際、乗り継ぎの都合でポントレジーナ→サメイデンでそれをやりました)、流石に世界的に有名な観光路線だけあって、平日でもほとんどのパノラマ客車は満員御礼状態でしたから、もし乗りに行くのであれば予約はするに越したことはありません。
ちなみに、スイスの駅発券窓口は思いのほか早く閉まってしまいますので(夏時間でも17:00には閉まる)予約は前日におこなうのが確実です。

<左は末尾に材木貨車を繋いだ貨客混交編成、右はベルニナ急行>