以下はI.MAGiCレイアウトコンテスト2005参加作品のレビューです。作品は結果発表のページからダウンロード可能です。
個人的には作者である
45-50s氏ご自身の本命はVRM4部門の「海底探検」の方だったのではないか、と思っているのだが、それは決して「折りしも昼下がり」が「海底探検」に劣る、と言っているわけではない。「海底探検」の方が私にとっては面白かった、と言うだけの話である。
それはさておき。
この「折りしも昼下がり」は、先に紹介した沖ノ鳥島氏作「文月本線」と共に、VRM3からVRM4への移行期を飾るに相応しいアイデアが盛り込まれた怪作である。「文月本線」と「折りしも昼下がり」は、それぞれVRM3にVRM4同等の表現が可能であることを証明すると同時に、その限界を示していると言う点で、今回のレイアウトコンテストのVRM3部門賞を飾るに相応しい作品であったと言えるだろう。

<45-50s氏作「折りしも昼下がり」より>
レイアウトの基本構成は、奇しくも拙作のVRM4部門応募作「Bergbahn Geisthorn」と共通している。すなわち、自動運転化された幹線を背景として組み込みつつ、レイアウトの主役にとしてその幹線から分岐する山岳線を組み込む、という手法である。
「折りしも昼下がり」では、トンネルやレンガ橋、杉並木を貫く隘路といった舞台転換装置が、幹線と山岳線の交点となる都会的な駅の世界と、表題「折りしも昼下がり」が指しているのであろう牧歌的な山村の世界を隔てている。惜しむらくは、見る者の好みにもよると思われるが、都会側の世界の出来が良すぎて、かえって山村部の印象を薄くしてしまっている点だろうか。

<45-50s氏作「折りしも昼下がり」より>
上掲スクリーンショットが問題の地点である。これはネタバレしても問題ないと思うので書いてしまうが、作品アーカイブ付属のドキュメントに従って、この地点の地下に埋め込まれている編成(上掲ショット枠内)の「待機音」に同梱されているWAV音源ファイルを設定してやる。
すると、その待機音が、ここを通過する際に「川のせせらぎ」として聞こえる、という寸法だ。この音を耳にする瞬間、作品表題「折りしも昼下がり」が詩文のように脳裏によみがえる。VRMのサウンド機能については、どうしてもビジュアル機能の陰に隠れれて活用例が少ないが、VRM3でもこんなことが出来ることを示している点で、このアイデアを高く評価したい。
一方で、ここにネタバレを書いたように(つまり、これを楽しもうとする人は事前にこれがあることを知っている)VRM3ではこの仕掛けを初見のユーザーに隠すことができない、という限界もまた示していると言えるだろう。これは「文月本線」の文月市電折り返し用の線路の存在に先に目がいってしまえば、それまでであることと共通している。
このような「遊び」は、ある意味においてVRM3の本来の用法を逸脱するものでもあるので、受け取り方は人それぞれであろう。VRM4スクリプトによって「複雑な仕掛けを隠蔽できること」を良しとするか、「仕様の隙間を狙った遊びの楽しみが減った」と解するかは評価が分かれるところなのかも知れない。

<45-50s氏作「折りしも昼下がり」より>
再び作品に戻るが、どうしても一箇所だけ紹介しておきたい表現技法がある。上掲スクリーンショットがそれだ。地形テクスチャを使った「側溝」の表現なのだが、地下水路への入口にご注目いただきたい。安易に考えると黒一色のテクスチャを配するところだが、ここに水面の色から黒へと変化するグラデーションのテクスチャを配し、さりげなく水路の奥行きを表現している。こういった細やかな技法に、45-50s氏のただならぬセンスを感じるのは私だけではないだろう。
今さらながら、という気もするが、氏には「ネットVRM界へようこそ」と改めて申し上げよう。私はあなたを良きライバルとして歓迎する。