以下はI.MAGiCレイアウトコンテスト2005参加作品のレビューです。作品は結果発表のページからダウンロード可能です。
仮にレイアウトコンテストに「アイデア賞」というものを設けることが許されるのであれば、私は沖ノ鳥島氏の実在シーン部門賞受賞作「文月本線」を文句無しに推挙するだろう。
実は「文月本線」というタイトルと「実在シーン部門」という組み合わせが、最初はピンと来なかったのだが、添付の「このレイアウトについて」を読んで、この作品が複数の実在シーンをキメラ的に合成したものであることを理解した。これを「実在シーン」を呼ぶことに違和感を覚える方もおられるかも知れないが、それを言えばしおじ氏の「敦賀」にしても、実在の敦賀はループはループでも決してエンドレスループではないのだから、同じことである。それはさておき。

<沖ノ鳥島氏作「文月本線」より>
実在路線部門にキメラ的作品を叩きつける、というその大胆不敵さも「文月本線」をアイデア賞に推挙する一因ではあるのだが、それが真の理由ではではない。かく言う私自身が
レイアウトコンテスト2004では、実在路線部門に奇を狙ってスイスの登山鉄道を送り込み部門賞を勝ち取った前科があるのだから、そんなことだけでは驚かないのである。

<沖ノ鳥島氏作「文月本線」より>
私が不覚にも感動を覚えたのは、このレイアウトの右端のわずかな面積を走り回っている「文月市電」にである。クモハ12単行が走る併用軌道のこの部分は、VRM3の最末期を語るにあたってエポックメイキングな名作と呼ぶべきだろう。
所以は如何。それは、この市電がVRM4のようにスクリプトがあるわけでもないのに、2つの行き止まり駅の間を往復運転しているように見えるからだ。上掲スクリーンショットはその駅の1つだが、摩訶不思議なことに、この後列車はユーザーが何をせずとも折り返し運転をするのである。ネタバレはナンセンスなので、後はご自分でご覧いただいた方が良いだろう。
正直に吐露するが、私は初見でこのトリックを見抜けず、ひとしきり首を傾げた後、フライスルーカメラで市電を追いかけ続け、そしてタネに気付いて独りPCの前で大爆笑した。こんな爽快な気分は久しぶりだ、ありがとう。

<沖ノ鳥島氏作「文月本線」より>
この他、「文月本線」は今回のコンテスト参加作中でも最大のサイズを誇るにもかかわらず、実に細かい部分まで作りこまれた名作である。特に、上掲スクリーンショットの駅の構造には恐れ入った。
無論、流石にしおじ氏と比較してしまうと荒さが目立つことは否めないし、特に本作はやや多くのアイデアを盛り込みすぎて破綻寸前の感もあるが、であるがゆえに、先にも書いたようにVRM3の最末期を語るにあたってエポックメイキングな名作と呼ぶに相応しいと思うのだ。ここにはVRM3の可能性がすべて詰まっているのだから。