ここに数台の壊れたテープレコーダーがある。
繰り返し繰り返し同じ曲が流れてくるのだが、それが見事に調が狂っていて聴くに耐えない。で、修理しようにも、なかなか頑固なテープレコーダーで、キミの音は外れているよ、と信号をいくら送っても、やはり同じメロディが、しかもボリュームが大きくなって返ってくるばかりである。
こういうテープレコーダーは、耳栓でもして無視するしかないのだが、音楽の素養のない人がこのサウンドを故障とは知らずに聴き続けると、いつの間にかそれが音楽であると勘違いしてしまいそうだが、それって放置しておいて良いものだろうか、という疑問が払拭できない。
一方で、そう思うのは、自分が修理屋さんだぞー、とか、あの音楽がおかしいってことがわかるぞー、ってことを自慢したいだけの自分自身のエゴからであって、実のところはテープレコーダーの命運にも、また、その狂ったハーモニーにハマってしまう人にも関心がないんじゃないだろうか、という疑問も、これまた払拭できない。
また、たとえばロックンロールだって、誕生当初は狂った音楽だったわけで、ひょっとすると今は粗雑に聞こえるあの故障音が、実は将来のスターダムである可能性だって、限りなくゼロに近いような気もするけれども、やはり否定はできなんじゃないだろうか、という疑問も、これまた払拭できない。
こうして雪だるま式に疑問が膨らみ私にのしかかる。今この瞬間も、壊れたテープレコーダーはいつものメロディーを奏で続けている。自らの故障を知らぬテープレコーダーが、少しだけうらやましい。