次の日の朝。学校。
あたしは結局、あのあと眠れないまま朝を迎えてしまった。RYOのことが気になってしかたないのだ。おかげで教室についても、頭の中がボーとしている。
「なに寝ぼけてんのよう、のぞみ!」
あたしの席に近寄ってきたのは、隣のクラスの親友のナナだった。ショートカットで元気が命。あたしとは対照的に、スポーツが得意で活発。あたしをいつも励ましてくれる大事なトモダチだ。
「アンタさぁ・・」
と、ふいにナナが声をひそめてあたしの耳元に唇を寄せた。
「な、なによう、くすぐったい」
ナナのあたたかい息が耳をくすぐる。
「バカ! アンタ、またあのチャットで・・してたでしょ」
「あ・・」
あたしはビックリして、ナナの顔を見た。
ナナはあきれた顔をしている。
「まったく」
ナナが何か言おうとすると、授業開始のチャイムが鳴る。
「じゃあ昼休みに、屋上で」
ナナはそれだけ言い残すと、自分のクラスへ帰っていった。
昼休み。
学校の屋上には、あたしとナナの二人きり。下に見える校庭では、男子たちが制服のままサッカーをしていた。
「ぼく、あのチャットでのぞみ見たんだよ?」
ナナは自分のことを「ぼく」と呼んだ。女の子なのに不思議だけど、ボーイッシュだから、妙にその呼び方が似合う。
「のぞみ、アンタいい加減、本名であのチャット行くのやめなよ!」
ナナはちょっと怒った顔だった。
「知ってる人間だったら、すぐわかっちゃうんだからね」
「でも、名字言わなきゃ、誰だかわからないよ。よくある名前だし」
「そういう問題じゃないの! もしなんかあったらどうするのよ。のぞみはカワイイんだし、あんなトコ行ってるなんてバレたら、変なストーカーに狙われるかもしれないって、心配なんだからね」
「うん、でも・・」
あまりにナナが真剣に怒るので、あたしは思わず返事をしてしまった。でも、RYOと会うために、いまさら名前は変えられない。
「きゃっ」
と、そのとき、強い風が通り抜ける。風は、あたしとナナのスカートを巻き上げ、二人のパンツを丸だしにした。
「やだ、ぼくたちのスカートの中身、校庭からモロ見えだったんじゃない!?」
ナナが恥ずかしそうに、急いでスカートのすそを整える。あたしも恥ずかしかったが、ナナの姿を見て、思わずクスっと笑ってしまった。
「なによぉ」
「なんでもない」
二人で笑っていると、あたしの心が少しだけ和らいだ気がする。
「ありがと・・」
「どうしたのよ」
「ちょっとね・・」
あたしは言葉を濁した。
「ところでさ、あたしをチャットで見たってことは・・ナナもあのチャットでまだ・・してるわけ?」
「ん? うん・・」
あたしの言葉に、ナナは顔を赤くした。
「おもしろいチャットルームがあるの。ケータイで、知らない男の子と出会えるんだよ〜」
あたしがRYOと出会ったチャットルームは、元はナナが教えてくれたものだ。
ナナもあたしも、現実には、恥ずかしくて男の子と話すことができない性格だった。
だから、最初は、ただ男の子と話せればぐらいの気持ちだった。ナナがどこかの雑誌で出会い系チャットを見つけ、その夜、二人で一緒に、そこへアクセスしてみたのだ。
ナナの自宅。
ナナは部屋の勉強机に座って、ケータイを手にする。緊張しながらチャットルームへ入ると、すぐに相手が入室してきた。
はじめてチャットした相手は、高校生のオトコのヒトだった。
「こん、マロン!」
マロンとは、ナナのチャットネームだ。
「俺、高校生。マロンは?」
「私は14さいダヨ」
ふだんボーイッシュなナナは、ネットの中では、ふつうの女の子的な雰囲気のキャラクターであるらしい。
「初オナニーっていつだった?」
「エ・・?」
ナナは、いきなりのことに顔を紅潮させ、チャットをするケータイの手を止めた。心臓がバクバクと音を立て始める。
オナニーなんて言葉は、トモダチののぞみの前でも使わない。第一、このときナナは、オナニーの経験などない。
「マロンのオナニー見せてよ」
でも相手の高校生は、そんなことお構いなしに、ナナに話しかけてくる。
「ソンナノ、シタコトナイヨ」
現実のナナだったら、こんな話題が出たら恥ずかしくって、すぐに背を向けてその場を離れてしまっただろう。
しかしこのチャットの中での“マロン”は、ナナより好奇心旺盛だった。
「中学生だったら、もうオナニーぐらいするだろ? みんなしてるぜ」
「そ・ソウナノ・・?」
相手の高校生は、そんなの当然という感じで、ナナの戸惑いをよそに、自分のペースに巻き込んでいく。
「マロンも、ブラの中に手をいれて、オッパイを優しくもんでみろって」
「デ・デモ」
「やれって! 胸をもむだけでいいから。もみもみって、下からオッパイを手のひらで包み込むように、もむんだよ」
「う・ウン・・あうっ」
勉強机に向かいながら、ナナは服をたくしあげ、ブラの中に片手を潜らせる。高校生の言いなりに、ケータイを片手に持ったまま、ナナはオッパイをおそるおそるもみあげる。
すると今まで経験したことのない快感が、胸から生まれ、身体の奥を熱くしていた。

0