四、句切れ、無句切れ
短歌は五七五七七からなる文です。その文が初句の五で切れる歌、二句の五七で切れる歌、三句の五七五で切れる歌、四句の五七五七で切れる歌、また結句の五七五七七まで切れない歌、逆に複数箇所で切れる歌、以上の分類にしたがって作品を例示します。
体育祭 ほどよく晴れている空を校長先生だけが見上げてる
平成22『飛び跳ねる教室』千葉聡
初句切れ。以下「晴れて/いる」は二句から三句へ句またがり、「校長先生/だけが」は四句から結句へ句またがり、つまり一首は初句切れであり、なおかつ句またがりを採用して形成されています。他の先生方は各自の持ち場で頑張っているのでしょう。
森で見たものに似てゐる 雨の日にいもうとがまどに吊るてるぼうず
昭和54『水村』松平修文
二句切れ。結句「てるぼうず」は「てるてるぼうず」の略、作者の造語ではありません。不気味なのは初二句が今もそのままになっているようなイメージです。二句の「る」、結句の「る」二音でダイレクトに結びついて「森で見たもの」が窓に浮かびます。
みちのくのここは小高(こだか)というところ火の見櫓に集う夕雲
平成14『一点鐘』岡部桂一郎
三句切れ。「小高」は「こだか」と読むようです。「おだか」なら福島県南相馬市ですが「こだか」は確認できません。とある町の火の見櫓としましょう。そして火の見櫓より高い建物はありまん。火すなわち赤のイメージを負う櫓を垂直線として、地面と平行に流れる夕雲がそこに集まってくる、遠景の夕焼けを配して日本の原郷のような風景です。
今すこしそして最後の和(なご)みある会話をしませう ヘネシーそそぐ
平成元『シュガー』松平盟子
四句切れ。先に〈麦わら帽ふたつ寄りあふ海岸の子どもの情景 をとなの遠景〉がありますが「子はかすがい」にならなかったようです。一首には冷たい平安が漂います。しかも注ぐのがトップブランドとくれば、グラスを手にした姿も華麗に映ることです。
堀割に倒立の街は思ひ出のやうにふるへてゆれてああ澄む
平成13『水晶散歩』井辻朱美
句切れのない歌。「天国の高度」四首の一首です。風車が出てくるのでオランダと思われます。なぜ「思ひ出」なのか。実際の街ではなく水面に倒立した街だからでしょう。また水路や運河といわずに堀割としたのも日本の水郷とリンクして訴えてきます。
燃やされる、踏まれる、引きずり降ろされる、振られる、掲げられる 国旗は
平成18『やさしい鮫』松村正直
句切れとしては複数の例で初句と三句の二箇所で切れています。二句は句割れ、二句から三句は句またがり、四句で句割れ、結句の「国旗は」が倒置法で本来は文頭にあって「国旗は燃やされる」以下、五つの文からなる五句三十一音詩ということになります。

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