2 数学筋の鍛え方
2−1 算数と数学
小学校の算数と,中学校以上の数学のどこが違うか。ひとことで言うと,一般性にある。算数は具体的な数の計算が主体だが,数学ではもっと抽象的な方法で,世界を表現する。
「世界を表現する」と言ったが,数学はある種の言語だ。自然科学の共通語と言ってよい。
例えばニュートン(1643〜1727)は『プリンキピア』(1687刊)を書くときに,その表現方法として,微積分を発明(発見?)した(1666年頃)。量子力学が作られるとき,D・ヒルベルト(1862〜1943)という数学者は,「物理学は物理学者には難しすぎる」と言って,ヒルベルト空間という空間表現を発明した。
なに,微積分は高校で習うだと。幾何学は平面のユークリッド幾何学を習い始めたばかりだと。
ならばピタゴラスの定理を見るがよい。直角三角形の性質を美しく表現しているじゃないか。
お前は小学校に入る前にNHK教育TV(3チャンネル)の「ピタゴラスイッチ」を見ていたぞ。父ちゃんはあの番組を見るたびに,藤原正彦先生(お茶の水女子大学)が,「数学は美しい」と言っているのを思い出す。
前置きが長いだと。ならば代数上達の方法を教える。次の2つだ。
a)基礎計算力を身につける
b)公式を自分で導く
a)は小学校でやった100マス計算の延長だが,遊び感覚なら父ちゃんがかつて教えたメイク10をするとよい。もう一度メイク10の我が家ルールを書いておこう。
自動車のナンバープレートなどで1桁の数字が4つ並んでいる。この数字を加減乗除して,10を作れ。ただし次の条件に従うこと。
1)数字は1回ずつ,全部使え。
2)数字の順番はどうでもよい。
3)(足し算・引き算を優先させるための)カッコはいくら使ってもよい。
4)計算の中間結果経過で分数が出てきてもよい。
例:「34-53」というナンバープレートなら,(3+3−4)×5,または,
3×3−4+5。
昔話
このメイク10は,父ちゃんが中学生のとき,じいちゃんから教わった。じいちゃんは,旧制中学のとき身につけたそうだ。大学に入ってみると,父ちゃんの同級生はみんな知っていて,暇つぶしにやっていた。この前『ドラゴン桜』を読んでいたら,51限目(第6巻)の柳鉄之介先生のセリフの中にあったから,たぶん今でも続いているんだろう。
ただしそこで使っているルールは,我が家のルールと違う。
じいちゃんから最初に教わったとき,父ちゃんは出来なかった。それというのも,「順番はどうでもよい」というルール,つまり条件2をじいちゃんが説明しなかったせいだ。そこで,父ちゃんは自分で条件1〜3を書き出して,その後,ゲーム感覚でやり続けた。
大学1年生のとき,学食で並んでいたら,同級生が定食チケットの「1199」を見せて,「これ出来る?」と言ってきた。父ちゃんは出来なかった。彼女の答えは,
(1÷9+1)×9
父ちゃんは「負けた」と思った。何に負けたって? 父ちゃんは「計算の中間結果も整数でなければならない」と思いこんでいたんだ。自分の思いこみを思い知らされて彼女の柔軟さに負けたと思ったんだよ。その結果条件4を加えた。
彼女は工学部建築学科へ行った。その後の人生は知らない。
2−2公式を自分で導け
次に,「b)公式を自分で導く」 の話をしよう。 二次方程式を例にとる。
次の二次方程式を因数分解で解け。
式1) x^2 - 5x + 6 = 0
メイク10をやっていれば,一瞬で
(x−2)(x−3)=0
と解ける。ところが,
式2) x^2 -x -1 =0
の答えは,解の公式を使わないと解けない。そのとき公式を忘れていると,パニックになってしまう。そこで,一度公式を導いておくと,忘れてもパニクらなくて済む。というか忘れない。
ちなみに,式2)の解の正の方は,「黄金分割比」と呼ばれている。
おっとっと,代数の話ばかりで幾何の話をしていなかったな。幾何のポイントはこれだ。
c)直角と平行線を探せ(無ければ引け)
直角が見つかれば三平方の定理(ピタゴラスの定理)が使えるし,平行線があれば同位角や錯角が使える。例えば,補助線1本で,三角形の内角の和が180度だと,一瞬で証明できるぞ(「錯角」を「錯覚」と書くようなドジが無ければ)。
そこでまとめの問題だ。正三角形(1辺の長さをaとする)の面積の公式を自分で導け。ヒントはこれまでの文章の中に全部書いてある。
解けたら次の科目に移るぞ。

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