東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2010/2/28

加藤和彦氏の見解  

ファンの方なら先刻ご存知の通り
加藤和彦の83年作『あの頃 マリーローランサン』
には 音楽環境をめぐる加藤氏のメッセージ カード
が封入されていました

時代的にやや古びてしまった事項があるとはいえ
本質的な部分で核心を突いた見解だと思えますし
個人的にも こうした想像力を持った聞き手の
一人でありたいと 今も思っています

以下 「ファンの皆様へ」と題された加藤氏の見解
を全文引用させていただきます

「久々のソロアルバムをお届けしました CBSソニー
移籍第一弾として いつにも増して意欲的に取り組
んだこのアルバム 気に入ってもらえましたか
一枚のレコードがリリースされるまでには 息の合
ったミュージシャン アレンジャー レコード会社な
ど数え切れないほどの友人 スタッフが関わっていま
す 当然それらの人々の才能や労働には正当な報酬が
支払われなければなりません ところが 最近では 
貸レコードやエアチェックなどの安易な複製が横行し 
レコードの売上げが圧迫されています
このままでは 音楽にたずさわる人みんなが危機を迎
えるだけではなく 新譜の制作や新人のデビューが
制限されたり レコード価格の引き上げを招くことに
もなってしまいます このような アーティストにと
ってもファンにとっても不幸な事態を防ぐためにも
レコードはプライヴェイトな楽しみだけに使ってくださ
い 音楽を愛するすべての人にお願いします」

クリックすると元のサイズで表示します

いささか高踏的な語り口は相変わらずだが
一切の無駄を排した演奏が信頼を呼び起こした83年の
会心作 その主人公は もうこの世にいない

クリックすると元のサイズで表示します

レーベルから送られてきた中村まり09年の新作の
サンプルCD(白盤)と 筆者が自費で購入した正規盤
音楽は同じかも知れないが 手にした時の質感やアート
ディレクションを含めて”作品”なのだと思いたい
ちなみにジャケットの絵は 中村本人が描いている



2010/3/3  1:10

投稿者:obin

了解です

おっしゃる通り 罪の意識がなく法を踏み
外しているのと「対価を支払う」という意
識や 良心の呵責を感じつつ(私的範囲
で)作品を複製化することとは 別に考え
なければいけません 問題は前者のような
人々が ネット環境によって増えてしまっ
たことです いわば罪を感じてないぶん
罪が深いわけです 




2010/3/2  23:47

投稿者:sumori

誤解のないように言いますが、僕は加藤氏のコメントに反論している訳ではありません。

基本的に作品に正当な対価を支払うべきなのは言うまでもないですし、加藤氏はクリエイターの立場として、それをファンにお願いしているに過ぎませんので、至極当然のコメントだと思います。

問題は、それをルールとしてどこまで厳格に実行に移すかなんですよね。確かに、悪いと判っていて多少はみ出してしまうのと、全然判らずに思い切りはみ出しっ放しなのは、大きく違います。一線を越えてしまっているのにその意識がないのは問題。無策ではいられない、それはその通りでしょうね。

でも、厳しく規制するよりは、著作権に関する啓蒙活動を地道にやっていくしかないんでは、そう思います。

http://members.jcom.home.ne.jp/bluesy

2010/3/2  14:50

投稿者:obin

う〜ん、難しい問題ですね

私も学生の頃はエアチェックやレコードの
貸し借りをしながら音楽仲間を増やしてい
ったものですから ソフト制作会社もそこ
ら辺はそこそこ容認してほしいという気持
はあります それらの草の根から音楽ファ
ンが育つという意見にも大賛成なのですが
加藤氏の見解はミュージシャンとしてもっ
ともだとも考えます 時間をかけて作った
リンゴを一夜にして盗まれる農園主の心情
にも似た思いを 加藤氏は述べたかったの
ではないでしょうか?

私がこれを何故引用したかと言うと
そういう想像力に欠ける人が残念ながら
増えてしまってきたからなのです

これは苦笑ネタにもなっているのですが
あるバンドのライヴで 若いファンが
CD-Rにサインをねだったそうです これ
は想像力という以前に そういう周囲の
環境が当たり前になってしまっているので
恐らく罪の意識が本人にもないのでしょう
ひどい! 無神経! と思う一方で私は
「ああこういう時代なんだな」と痛感し
なぜか彼を責める気にはなれませんでした

ぼくらはダビング交換しつつ好きなCDに
は対価を払うという態度が当たり前の時代
に育ってきましたが 今は極端に言えば
音源は配信とYou-Tubeで十分 その代わ
りにライヴだけは豆に足を運ぶといった
世代も広がっているのだと思います そし
てそういう聞き方を 私のなかの半分が
納得してもいるんですね 事実ミュージ
シャンの大半が今 CDの売上げよりは
ライヴ動員で生計を立てる方向にシフト
しています そんな意味ではパッケージ
ソフトに対する認識が変化するのは当た
りまえなんでしょうね

とっちらかってうまくまとめられずに
スイマセン!

2010/3/2  13:18

投稿者:sumori

加藤氏のコメントは正論だと思いますが、聴き手の視点で考えると、作品の複製が制限されることには非常に抵抗感があります。

昨今、音楽、映像業界側は規制を厳しくしたくてしょうがないようですが、はたしてそんなことで、業界が健全に発展するのか、僕は常に疑問に思っています。

聴くのであれば対価を、ごもっともです。しかし、複製を規制しすぎると、逆に音楽文化の浸透を妨げることになるではないか、そう思えてなりません。多分、熱心な音楽ファンであれば、駆け出しの頃、友達同士で自作コンピのテープを交換し合ったような経験があるのではないでしょうか?レコードを貸しあいっこして、テープに録って聴いた、そんなことの積み重ねで今日の蓄積の土台が出来上がった、そんなことはないでしょうか?

ちょっとでも興味を持った作品をすべて購入するのは非現実的です。規制を厳しくすればするほど、草の根レベルでの普及活動は妨げられ、メディア露出の高い一部のアーティスト、作品以外のものを聴く人は減ってしまうと思います。売れ線のものが爆発的に売れれば一時的には業界の底上げになるかもしれませんが、長い目でみれば、音楽文化の層は薄っぺらになり、衰退していくでしょう。

CCCDは強い反発とともに失敗に終わりましたが、現在デジタル放送やDVDソフトは厳しくコピー制限がかけられていますよね?あれも僕は非常に疑問に思うんですよ。著作権法で認められているはずの私的使用目的での複製も制限することになっているわけですから。

コピーフリーにせよとはいいませんが、おおらかすぎるんじゃないかと思えるくらいがちょうどいい、個人的にはそう思うんですよね。さじ加減が難しいでしょうが。

http://members.jcom.home.ne.jp/bluesy/

2010/2/28  16:20

投稿者:obin

真の音楽家は聞き手をすごく大事にします
それは何もファン サービスということで
はなくて 音楽が聞き手に届いてこそ初め
て成り立つという関係性に思いを寄せてい
るからなんでしょうね

だからこそ やはり対価を払うというの
は基本的に守られなければいけないもの
だと 私も強く思っています

少し話は飛躍しますが 音楽評論の分野
で私が潔いなあと思うのは 聞き手とし
ての役割をきちんとわきまえている人で
すね 逆にいえば 音楽家でもないのに
たまたま自分が知っているコードネイム
や楽論を知ったかぶりで音楽家風を吹か
すような人は かっこ悪いなあって感じ
てしまいます ほら よくいるでしょう
そういう輩が(苦笑)

2010/2/28  13:02

投稿者:路傍の石

違法サイトからのダウンロード問題は深刻です。音楽ファンとしての矜持を持っているならばそんなところには近づかないと思うし、仮に一歩間違って利用したとしても、そこから享受した感動はどこかでアーティスト側へ対価として支払う姿勢が大切なんだと思いますね。

エアチェックも問題視されてきた経緯がありましたが、かつての心あるファンならばエアチェックで気に入ったアーティストの曲はきちんとレコードを買いなおしていたし、友人にも同じように勧めていたと思います。そして買ったものをお互いに貸し借りして音楽文化は健全な形で育まれてきたのだと思います。音楽が安易な形で聴き捨てられていくようになると、そこにあるのは刹那的な快楽だけで、本当に心を揺さぶる感動はいつしか忘れられていってしまうのではないでしょうか。そんな気がいたします。

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ