東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2010/3/7

3月7日 雨  

会社を辞めたとき ひとつだけ誓ったのは
これからはもっと本を読もうということだった
それまでも本は好きなほうだったけれども
いかんせん時間が思うように取れなかったから

読み終えた日 その本の作者と表題を手帳に
記す 買ったCDや行ったライヴをメモするように
そのことだけは習慣にし 必ず守ってきた
そうでないと 負けてしまうと思ったから

むろん大した量ではない ぼくは読みながら
考えてしまう方なので なかなかページが進ま
ないこともあるし 活字を追うだけで言葉が頭
に入ってこないときは 躊躇なく書を置いた

退職願を提出し 受理されたのが07年の2月20日
あれから三年の歳月が流れた
そのあいだに ぼくはちょうど100冊の本を読み
家族を一人失った


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03年に編まれた沢木のアンソロジーは全9巻
徹底した観察眼と心情に寄り添う想像力との拮抗は
まさに報告者(ジャーナリスト)のそれである
仕事は忙しかったが 思考が自分の内面へと向かって
いった時期なので むさぼるようにすべて読破した
四十代前半の読書体験として 今も忘れられない



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