東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2006/12/24

カーリー サイモンの新作に寄せて  

カーリー サイモンがスタンダード集「イントゥ ホワイト」を
発表する
彼女が他人の楽曲で埋め着くされたアルバムを作ったのは今回が
初めてのことではない
何しろ過去には「トーチ」(81年)というジャズ スタンダードの
名作を残しているし「マイ ロマンス」(90年)もずっと心に糸を
引いていくような素晴らしい作品だった
今回はキャット スティーヴンスのアルバム表題曲
前夫ジェイムズ テイラーの「瞳を閉じてごらん」を取り上げるなど
自分と同世代の音楽家への目配りもされている

ロッド スチュワートのスタンダード アルバムが
売れに売れるなど 昨今ではロック世代による
”昔あったいい曲”への思いを秘めた作品がとみに目立つけれども
カーリーもまた然り

東海岸のリベラルな感性の持ち主も 
今年62歳になった
成熟したとか 分別が付いたとか
そういう結論を僕は急ぎたくない
”結論”
何て虚しい言葉なんだろう

          小尾 隆




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