東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2010/7/26

バードソング・カフェの記憶  Rock N Roll

今月いっぱいで店を畳む中目黒のバードソング・カフェ
長い間お疲れ様でした

ぼくにもある種の感慨がある
この店の6年半がちょうどぼくにとっては 会社員だった
最後の3年と 会社を辞めてからの最初の3年半というこ
ともあり 最後の3年は飲み方が激しかったことや 新し
い3年半は穏やかな飲み方に変わってきたことも含めて
ちょっとした年代記(クロニクル)だ

ロック・バーとしてはお客さんの入りも クチコミで伝わ
ってきた評判ともに良く 成功した方だと思う
毎晩のように客のグループが2回転も3回転もすることや
女性客の足が途絶えなかったことは
同業者たちを羨ましがらせた

すごく解りやすくいえば 店主である梅澤くん自身がお客
さんとともに楽しみ それが客にきちんと伝播していった
ことが結果を出していった
音楽マニアのための巣窟であることよりは
異業種の人たちとの語らいを むしろ彼は楽しんだ
やがてリピーターは増えていった

むろんお店ごとの尊ぶべきカラーというのはあるだろう
また 客と店主との相性の善し悪しという問題もある
ただ遥か彼方の70年代のように 主が不機嫌そうな顔で
客を峻別したり 高踏的な態度に終始するような時代は
確実に終わりを告げたと思う 客は音楽だけを求めるの
でなく 話をしに来るのだということを 彼はほぼ正確
に鋭く読み取っていた そして彼は少なくとも美辞麗句
よりは ずっと実感のこもった会話を選んだ

ものすごく逆説的にいえばそれだけ時代が荒れ果て 
砂漠のようになっていったのかもしれない
そして人々は今夜もロック バーの扉を開ける

それは結局 音楽を狭い世界に閉じ込めておくのか
それとも音楽とそこから派生するものを 柔らかな流れ
とともに見つめていこうとするのかという
ぼくにとっても大きく切実な問いだったような気がする

6年半という地点でのやや唐突な今回の閉店も
よりよい環境を求めて"次の店”に照準を定めた結果だという
末席の客としての自分の実感としても これほど感傷や
諦観が伴わない閉店というのも ちょっとない

それにしても ”気は心” 
それが最後の最後までしっかりと伝わった店だった

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きびきびとオーダーをさばいていく梅澤くん
夏なので氷モノのドリンクもどんどん出ていきます

「広告代理店に行くまえ 学校を出て最初に就職したのは
アパレルだったんですよ 自分が最も苦手で接点のないこ
とをあえてやってみようと(お金のために割り切って)
はじめから二年が限界だろうと 案の定キツかった(笑)
一部の人たちは根本からしてまるで異なる別人種だった
人間の”消費面”だけがすごくて 常にトレンドだけを追い
かけて疲弊している だから砂を噛む思いだった 一番
苦痛だったんです (音楽は)データの羅列だけだと苦し
くなってくるのよ お客さんにはレコードや曲を通して
自分を語ってくれたほうが お酒を飲んでいて楽しい 
映画やら小説やら話がどんどん飛び火していくのがすごく
面白かったり ダーッて反応が返ってくる人ってカッコイイ
なって思うんですね」(筆者取材時に於ける梅澤氏の談話
より抜粋させていただきました)

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