東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2007/6/23

たった一人の戦い  Rock N Roll

有田芳生著「テレサ テン十年目の真実〜私の家は山の向こう」
(文春文庫)を読了

日本では一般的には「演歌歌手」として認知されているだけのテレサの人生が
こんなにも波乱に満ちたものだったとは
彼女の生い立ちと中国 台湾の歴史がダイナミックに折り重なり
複雑な感情や思惑そして政治的な局面を呈しながら
語られていく

クライマックスはやはり89年に起きた天安門事件
(註)に
ダイレクトに反応していったテレサの心の動きであり
それを巡る複雑過ぎる様相だ
彼女の生涯はこの事件の前と後で切り裂かれていく

まったくお恥ずかしい限りだが
こんなにも多くの煩悶 苦悩 困難をテレサが抱えていたとは
不覚にも知らなかった

有田さんのジャーナルな視点 綿密で膨大な取材
そして何よりもテレサ テンへの純粋な好奇心
(ありていに言えば愛情)が このノンフィクションを
支える 太く 逞しい幹となっている
何かを知りたいということ
埋もれてしまった歴史から何かを探り当てようとする
気持ち
ただ それだけのことからスタートしているのが解る

今度 テレサ テンのCDを買ってみようと思う


(註)天安門事件(てんあんもんじけん)

  89年6月に起きた北京での激しい闘争のこと

  中国政府内で民主化を推し進めようとした改革派の
  勢力は学生や社会人の支持を得ながら各地で一挙に
  広がりを見せたが
  それを恐れた最高権力者が軍隊を伴って
  デモ隊を制圧 そして
  「血の弾圧」は6月3日から4日にかけて強行
  された
  その死者は天安門周辺で319人
  その他の主要都市でおよそ800人と伝えられる

  ある意味 持つものと持たざるものとの関係や
  権力が重要な局面でいかに暴走するかを
  最も醜悪な形で凝縮した事件であり
  その血塗られた歴史が 忘れ去られることはない
  

  

  

  
  

 























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