東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2008/2/22

大寒町〜そこにあった場所  

77年頃スタートした江古田のテックスメックス専門レコード店、クランが
この2月に店を閉めた

開店当初は英米のシンガーソングライターやスワンプ ロックなど
渋いロックを聴かせる喫茶店(夜は飲み屋)として知る人ぞ知るスポットであり
私もその時代から頻繁に顔を出していたかつての若者だった
初めてリクエストしたのが ジェシ ウィンチェスターのファーストだったといえば
あの時代の空気を感じ取ってもらえるだろうか

サントリーホワイトのボトルを飲み倒した日々
トム ウェイツを聞き通した雨の午後
「ディキシー チキン」に興奮した夜
ダグ サームの死去を知らせに行った晩秋

思えば私の音楽的成長はこの店の存在とともにあったのだが
昨年末の西早稲田ジェリー ジェフ閉店とともに
時代が変わりゆく様を今更ながらに
突き付けられるような思いである

家への帰り道 店主に挨拶するくらいが
最近の付き合いだったというのが正直なところ
確かに厳しい時代は近年ずっと続いていたのだろう

ともあれ約30年の歴史があった
吸い込んだ思いも
捨て去った過去も
とにかくだ

そんな思いを見透かされないように
夕暮れの静けさのなか
弱まっていく太陽の光のなか
最後のシャッターは降ろされていた

別れを告げる相手も
もう永遠に そのちょっとぎこちない姿を
見せてはくれない












2008/4/4  23:57

投稿者:Fineline

おっしゃる通り、私のHNはネッド・ドヒニーの曲に由来しております。見破るとはさすが音楽評論家の先生ですなぁ。感服致します。
ネッドの1stは中学生の時にラジオで聴き、早速レコード屋へ走ったのですが、何を血迷ったのかネッドを買わずにマイケル・マーフィーの『コズミック・カウボーイ』、リック・ロバーツの『ウインドミルズ』、バドルフ&ロドニーの2ndを買ってしまいました。そうこうしているうちにアサイラムの発売権が東芝からワーナーに移り、ネッドの1stは入手困難の状況へ。ワーナーさんが重い腰を上げられたのは大学生の時です。感動の再会でした。
『プー横丁』さんへは私もよく通いました。一時期店を閉められCDのリリースに力を入れられていましたね。エリック・カズの『1000年の悲しみ』やハッピー・トラウムの『ブライト・モーニング・スターズ』の発売元がプー横丁になっていたのに驚いたものです。最近になって京都市役所の近辺で店を再
開。ホーム・ページには小尾さんの祝辞も寄せられていましたね。

2008/4/3  23:24

投稿者:obin

こちらこそ、ご訪問ありがとうございます
finelineさま(ドヒニー曲に由来ですか?)

僕は京都では昔ジャンクショップやプー
横町にお世話になりました

おっしゃる通り 探求心を持って音楽に接する
人々が少なくなっていたように感じます
この盤にデュアンが参加しているなら あの盤も
聞いてみよう! というような、、、

僕の次の本が「レコードってこんなに楽しいんだ!」
というきっかけになってくれればと願っています
今 「アメリカ編」と「イギリス編」の2冊に
分けての順次発売に取り組んでいるところです

それでは また!








2008/4/3  19:40

投稿者:Fineline

はじめまして、恐れ多くも『レコード・コレクターズ』などで活躍中の音楽評論家、小尾隆様のブログにコメントを投稿させていただきます。
私がよく通っていた京都のレコード屋も数年前に相次いで閉店しました。まず、カントリー専門の「チェロキー」、次いで、SSW、アメリカン・ロック、R&Bを取り扱っていた「ベター・デイズ」。
ネット配信が主流となり、CDが売れなくなった昨今の音楽環境の下、人々の音楽に対する向き合い方も変化してしまったのでしょうね。
今後とも宜しくお願い致します。

2008/2/23  19:09

投稿者:長谷雅春

という訳で、昨年末くらいからの出版不況がすさまじく、僕もかなりのダメージ受けました(精神的にはまったく受けていませんが)。いまはフルキャストに登録して、週末バイトしてます。そんな訳で当方の事情、ご理解のほどお願いいたします。小尾君のご活躍をお祈り申し上げます。

2008/2/23  12:10

投稿者:obin

そういえば長谷さんと最初にお会いしたのもクランに於いてでしたね S子さんが亡くなったことは文屋さんから聞きました
ともあれwho knows where the time goesです
ところで校正のバイトとかないですか?


2008/2/23  11:19

投稿者:長谷雅春

小尾くん ご無沙汰です。クラン閉店の報、貴ブログで知りました。5年くらい前、昔の常連さんが亡くなった事を知らせたのが最後のコンタクトです。僕は1995年くらいに、ささいな諍いで店主と袂を分かちましたが、1970年代,1980年代のクラン体験は一生引きずっていきそうです。

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