東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2008/3/22

3月19日  

川口のリリア ホールにて 佐野元春&ホーボー キング バンドを見る
僕自身 今回の "sweet soul blue beat " ツアーは いろいろと考えを巡らせたいことがあって
初日の伊勢原に始まり 群馬 横浜 そして今回の川口と 
関東に限ってではあるが  自分なりに足跡を追ってきた

いくつかのマイナー チェンジが為され バンドの音が次第に固まり
飛躍していく様を目の当たりにすることは
僕にとっても  まさに特別な体験である

サウンドスケープに関するホーボー キング バンドの確かな実力に
関しては ほぼ前回までに納得ずみだったので
この川口の夜では 佐野のリリックに意識を集中してみた
そうした点から考えてみても 今回の曲配列に 佐野の大きな意識の流れや
時間というものが運び込む不思議を 感じることが出来る

成熟 再会 そしてパーティ
今回のツアーを巡るキーワードは幾つもあるのだが
同じ気持ちで歌われた違う曲が
互いに折り重なり合い 響き合い 収束していく様は
ひとつのクロニクルという以上の
価値というものを運び込んでいく

長い旅となった佐野のツアーも
いよいよ来週で終わりを迎えるけれども
ひとつのことを言うために 違う語彙を選び取っていく
彼の意識 その恒久の流れは
きっと これからも 果てることなく続いていくことだろう






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