東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2008/10/27

its raining  

アーマ トーマスの新作『シンプリー グランド』が素晴らしいです
私が尊敬する情熱の音楽ライターであり 友達でもある文屋章さんが
以前話題にしていたので気になっていたのですが 本日ジェイムズ 
テイラーの新作『カバーズ』と一緒にやっと購入しました

CDの書き出しは「アーマの音楽にはいつもピアノの心が寄り添って
いた」と始まりますが ドクター ジョン マーシャ ボール 先日
初来日を果たしたばかりのジョン クリアリー あるいは普通のOLさん
にもおなじみのノラ ジョーンズといったピアニストたちをそれぞれの
曲に配しながら じっくりと噛み締めるようにニューオーリンズの歌姫
アーマは歌っていきます 

で 音楽から離れますが この頃はなかなか不調です 
友達の一人は会社を辞めてからの最初の2年で自分の本を3冊も出すなん
て恵まれているよ と言ってくれますが それはたまたまであって
音楽ライターなんて言ってみても私の場合毎日仕事があるわけではありません
(そもそも ですます文体が不調の証拠? )

柄本明さんは「俳優と言っても仕事がない時は潜在的な失業者みたいな
ものです」と語っていますし あのルー リードでさえ「ツアーをして
いる音楽家に家はないんだ ひょっとしたらホームレスの気持ちが解る
のはミュージシャンかもしれない」との発言をしたことがあります

僭越過ぎますが それらと似た感情です

なんだか暗い話題になってしまい申し訳ありません
このところずっとずっと
心が弱っているものですから
今日も中古レコード屋さんで「まあお互い 贅沢は言わないから
飯が喰えて音楽が聞ければいいね」なんていう内容のハナシにな
りました

些細な現実や煩わしい人間関係にくじけないこと
お金のことに頓着しない大らかな気持ちのこと
あるいは各駅停車に乗って窓の外を見上げてみること

そんなことを気高く 辛抱強く持ち合わせていれば
いいのではないでしょうか

そうそう アーマ トーマスの話しでしたね
すみません
アルバムの最後はランディ ニューマンのピアノに導かれながら
彼の「今にも雨が降り始めそうだ」で締めくくられます
近所の西友に夕方の買い出しに行ったら
偶然にも 雨が降り始めました






2008/10/30  7:14

投稿者:obin

将来の成り行きを悲観して自殺する人もいるくらいで
すから自営業の場合互いに”心の回路” には十分留意
しましょう 晴耕雨読という言葉がありますが その
くらいの余裕を持ちたいものです 他人の芝生は良く
見えるもの 自営も勤め人も大変な時代です

2008/10/29  18:52

投稿者:貯木堂主人

道はそれぞれですが、お互い自分で決めた道ですから、がんばりましょう。「自業自得を旨とする」、「愚痴は言うまい」「人を羨ましがるまい」なのですが、叫び出したいときが私にはあります、とくに雨の日などは。「楽しいけど苦しい」んだ。小尾さんの文章好きです、支持します。

2008/10/29  13:13

投稿者:obin

何らかの鬱屈した心情(羨望や嫉妬も含めて)がある
標的を見つけると複数で集中的に個人を叩くといった
ネットならではの回路は6月にこのlogで体験済み
いやあ改めて醜い連中だったなあ〜
人をどうこう言うまえに自分はどうなのか
そう問い質してみたい人は多いですね

2008/10/29  11:59

投稿者:コロッケ

他人のブログを読んでいてこんなことが書いてありました
リスクを覚悟して自分の選んだ道を突き進むロックな生き方
雇い主の下で会社員として地道に生きるブルースな生き方
その両方を両立してしまう
会社員でありながら、好きなことでも大成してしまうのは
ファンキーな生き方とでも言うのかも。
私もかれこれフリーランスのライターとして20年が過ぎました
小尾さんとは違う広告のフィールドですが
毎日、不安と焦りと希望が頭の中をぐるぐる回っています
「さあ、これからどうする!?」と言う答も見つけられず
いつも決まって「ま、いいかっ!」とつぶやくか
ドリスデイの「ケセラセラ」を口ずさんだりして
(ビートルズのLET IT BEもたまに)お酒飲んで寝てしまう体たらく
まったくもってトホホホ・・・・です。
私もアーマ・トーマスの新譜聞きながら書いてみました。
10曲目のCOLD RAINが滲みます。

2008/10/27  21:34

投稿者:booney

おいおい、おびっち。尊敬だなんて、そんな、俺も立派なプータローですぜ。アーマの新作、心に滲みますね。初秋にほろ酔いで聴くアルバムとして大推薦ですね。不調だなんて言わないでさ、のんびりやればいいよ。俺はのんびり過ぎてダラダラだけど。

2008/10/27  21:00

投稿者:Almost Prayed

山下達郎は以前「音楽は力の弱いものだから、本当に落ち込んだりしたときは音楽なんて聴けない、けれどもカーティス・メイフィールドの“There's No Place Like America Today”はそういうときでも不思議と通用する」といった意のことを語っていました。自分にとってのそういう音楽は、R.E.M.の“Automatic For The People ”やザ・スミスの“Hatful Of Hollow”だったりします。力は弱いかもしれませんが、心に響く音楽を支えとして自分はこれまで何とか生きてきた感じがします。

心が弱ってしまうと何もかもが重く暗くつらく感じて、自分の場合は厭世的になってしまうことがしばしばです。自分は小尾さんの著書の一読者に過ぎませんが、少しずつでもご回復なされますよう、心よりお祈り申し上げます。こういう書き込みしか思いつかない自分ですけれど・・・

記事を読んで、アーマ・トーマスの作品をしばらくぶりに聴きたくなりました。

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