東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2010/4/17

4月17日〜小さな発見の大きな響き  

キャロル・キング『タペストリー』

本作のプロデューサーであるルー アドラーは
「彼女がすぐ近くで歌い ピアノを弾いている
ような録音を心掛けた」と回想しているが 実際
アルバムの主人公もカーリーヘアにセーター 
ジーンズに素足という飾らないいでたち 顔には
まだソバカスが残っているくらいだ

その音楽はそっと語り掛けてくるような親密さが
あり R&Bに根ざしたコクのあるビートがあり
不器用な歌いっぷりは 歌にかえって切迫感を与
えている

またこのアルバムはキャロル・キングの成長物語
と言えるかもしれない 天才少女作曲家としてデ
ビューした1950年代末の頃の如才なさに代わって
大人の視点が備わっていることに驚かされる

かつてシュレルズに提供した無邪気な「ウィル 
ユー ラヴ ミー トゥモロウ?」は祈りの歌へと
生まれ変わり 「ナチュラル ウーマン」にはウ
−マン リヴ的な主義主張ではなく 男性との関わり
のなかで自分を発見していこうとするしなやかさが
溢れている そして「きみの友だち」で差し伸べら
れた手に気が付く時 聞き手は自分のなかに温かい
川が流れていることを知るだろう

本作を思いつめたような気持ちで聞く女性がいたら
ぼくはその人に恋をしてしまうかもしれない

小尾 隆

(初出記事は『ロック栄光の50年』vol.10  05年8月
講談社 今回少しだけ文章を新たにしました)

クリックすると元のサイズで表示します

補足:高過ぎるチケット代や聞き手の保守化にこのlogでは
疑問を投げかけてきました その気持ちは今も変わりません                         
しかしその問題とはまた別に 昨日武道館で行われたジェイム
ズ・テイラーとキャロル・キングの『トゥルバドール リユ
ニオン』コンサートは 音楽的な志の高さに於いて予想を遥か
に超える圧倒的な素晴らしさでした 二人とも今もなお成長し
ていることが 懐かしい曲に込められた新しい息吹きが 
そして何よりも音楽を信じていることが尊い そんなことを噛
み締めた夜でした 何かすごく大きいものを貰ったなあ
帰りに会場で流れたのが ジョージ ハリソンの「ビハインド
ザット ロックド ドア」 そのことも覚えておきたい


クリックすると元のサイズで表示します

クリックすると元のサイズで表示します

勝ったり負けたりと まるでバカみたいな世界
そのあいだにも きみの心はボロボロに壊れてしまった
こんなにひどくなるなんて思っていたの?

ならば私が 宇宙の足跡のように
あなたをきっと連れ出してゆく
あなたを きっと連れ出してゆく

「スペースシップ レイシズ」より


クリックすると元のサイズで表示します

くたびれ切ったバーで身を沈める老人が言う
「お若いの こんな場所は初めてかな  
あんたに聞かせたい話があるんだ
そう 親と子の物語なんだが 私はいつしか家を
出てしまった」

まるであなたと僕のような 喪失と発見
どうかそこに照らし出すような光が
ありますように

「オンリー フォー ミー」より

クリックすると元のサイズで表示します

武道館から九段下方面を臨むの図
当日は雨が降っていました
葉桜もなかなかいいですね



トラックバックURL

トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ