東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2010/5/30

ローリング・ストーンズという孤独  Rock N Roll

黄金期を支えた名ギタリストであるミック・テイラーが脱退し
て 新たにギタリスト探しをしながら録音が進められた76年
のLPだ そんな過渡期の作品だったせいか 全体に漂う隙間
が 切ない

メンバー全員が未来を前に立ち尽くしているような印象を受け
る この録音が始まった時 ミックもキースもすでに31歳

世界一のロック・バンドになった
使い切れないほどの金を稼いだ
好きなだけ女と寝た
シャンペンの風呂にも入った

俺たちを知らない奴は いない

しかし 自分の子供に不倫をなじられるという設定の「愚か者
の涙」に ミック・ジャガーの迷いが投影され
ハンナ・ハニーという女の子を巡る回想録とでも言うべき
「メモリー・モーテル」に 彼らが通り過ぎてきた歳月が染み
渡っている

(拙者著の『my favorite of UK Records』より)

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