東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2010/7/21

追憶のブリンズリーズ  

前掲のゴム=ニコルズ作を聞きながら 思わず棚から
引っ張り出してきたのが ブリンズリー シュウォーツ
の『Silver Pistol』でした

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ブリンズリーズの3作めは 五人めのメンバーとしてイアン 
ゴムが初参加 ギターパートを補強するとともにソングライ
ティングの面ではニック ロウと刺激し合うような仲となっ
た ときは71年の8月 メンバーの自宅にエイト トラック
の機材を持ち込み 合宿生活をしながら作り上げたその音楽
は ホーム レコーディングならではの揺らぎや温もりに満
たされていった

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時計回りにニック ロウ、イアン ゴム、ボブ アンドリュ
ース、ビリー ランキンそしてブリンズリー シュウォーツ
その容姿が彼らの”ヒッピーイヤーズ”を伝える
賛辞欄にはのちにニックと活動をともにするマーティン ベ
ルモントの名前も連なる 当時マーティンは彼らのローディ
をしていた

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英国オリジナル盤(UA UAS29217)に付属のポスターより
左端がニック ロウ 子供と一緒にいるのがイアン ゴム
二人とも当時まだ23歳前後だった
ちなみにロウ=ゴムのコンビは数年後に「Cruel To Be Kind」
を生み出すが この名曲が大ヒットしたのはブリンズリーズ
が解散してから ニックによる新たなヴァージョンによって
であった 歴史とはこのような運命のいたずらによって軋ん
でいくものなのかもしれない

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件の曲を冒頭に収録したニック  ロウ79年のセカンド 
前作のタイトルが”クールの神様” 曲も”音楽は金さ!” 
からスタートしていたが 今回も”守銭奴の労働者” と
毒気に満ちたものだった
いわばロウなりのパンク/ニューウェイヴ時代の戦術変更
の宣言だったのかもしれない

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インナースリーヴも鮮やかなキッチュ感覚が前面に押し出され
牧歌的だった70年代に別れを告げている
演奏陣はデイヴ エドモンズを始めとするロックパイルの面々
当時ロンドンに渡りクローヴァー(註1)という垢抜けないバ
ンドで下積みしていたヒューイ ルイスがゲスト参加している
のも興味深い ちなみに彼とニューズの80年代の大ヒット曲は
「ヒップもやがてスクエアになる」という皮肉とも開き直りと
も取れる 苦みばしったナンバーだった

註1:クローヴァー

70年代の初頭にサンフランシスコで結成され ファンタジー
レーベルからデビューするも 泣かず飛ばすの状態が続き
英国のパブ サーキットでの活動に転じた 中心メンバーは
アレックス コール のちにドゥービーズに参加するジョン
マクフィもオリジナル メンバーだった ちなみにヒューイ
ルイスは途中からこのバンドに合流 ロンドンの寒さに
震え上がりながらシスコの陽光に思いを馳せる「Streets Of
London」という名曲も このバンドのアンヴィヴァラント
な感情を指し示す
なお彼らがエルヴィス コステロのデビュー アルバムで
”覆面の” 演奏を担っていたことは ロック伝説でのさりげ
ないエピソードのひとつ

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盤面のb-side トータライズされ遊び心も満載なデザイン
は インディ レーベルのレイダーならではのもの
左手には煙草が差し込まれている
さすがロウといえども”禁煙の時代”までは読めなかったようだ




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