東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2006/9/30

Dear Mr.Stevie  Rock N Roll

スティーヴ ウィンウッドのことが一体いつからこんなにも好き
になったのか 
僕のウインウッド コレクションもそれなりの枚数になってきた
今日は手持ちのスペンサー ディヴィス グループの7sをチェック

 GIimme Some Lovin b/w Blues In F (fontana TF762)
Im A Man b/w I Cant Get Enough Of It (同785)
 Every Little Bit Hurts b/w It Hurts Me So (同530)
Keep On RUnning b/w High Time Baby (同632)

オルガンインスト「Fのブルース」は私のDJでよくオープニングに
選ばれるナンバー 「エヴリ」はブレンダ ハラウェイの素晴らしい
バラード 「マン」はシカゴのカヴァーも良い
ジャッキー エドワーズの「キープ」に英国とジャマイカとの親近性と
歴史を感じるのも良し

 米UA盤も持っています
 Im A Man b/w Cant Get Enough Of It (UA50144)
この際ヴァージョンが派手な米盤Gimme Some Lovinも欲しい
つまりブライアン ウィルソンが激怒したという方のヴァージョンだが
ジミー ミラーの鳴り物得意のセンスはのちにストーンズで再度
試され実を結ぶことに

でロンドン帰りのカミさんからのお土産が以下の盤
ポートベローのイントキカ レコードで買ってきてくれた 感謝!
http://www.intoxica.co.uk

 I Cant Stand It b/w Midnight Train (fontana TF499)
Dimples b/w Sittin And Thinkin (同471)
前者はソウル シスターズのスー吹き込み 後者はヴィージェイのフッカー曲

 もう一枚の西独盤が興味深い B面が独自のカップリングなのだった!
 Gimme Some Lovin b/w Goodbye Stevie( 独fontana 267651 TF)
 ピアノでシャッフル ビートに乗る「グッバイ〜」 素晴らしい!

 なお上記曲すべては96年に出されたCDの2枚組コンピレーション「Eight Gigs A Week」
(Island Chronicles 5 /524 180-2)で聞ける もう廃盤かもしれないが
探す価値あり そういえばこのCDで曲解説を担当されたのが 音楽評論の大先輩である
山名 昇さん  今日30日が誕生日です!

Happy Birthday Dear.Mr,Yamana
しかし山名さんといい Cakeくんといい 吉田といい 俺といい
9月はいい男 もとい知性のある男が生まれる月だな(笑)


 




 
 





2006/9/29

背後に響く ソバカス声  

 およそ20年探していたデヴィッド T ウォーカーの
Press Onをやっと探り当てたのは96年の春のことだった
茶地に刷り込まれたジャケットをバックに僅かに微笑む
デヴィッドの姿が印象深いこのアルバムを一体何年探し続
けたことだろう

 僕はずっとキャロル キングのファンだったので
彼女の73年作「ファンタジー」に所収された「コラゾン」
で初めてデヴィッドのギターと出会った
シャープきわまりないカッティングが彼との最初の出会い
だった それからいろいろ調べてみるとキャロルの72年盤
「ライムス&リーズンズ」でダニー コーチマーと
デヴィッドが弾き分けていたことも 解った

 そっと裏ジャケットを眺めてみる
ベイシックなリズム隊にはハーヴィ メイソン(Ds)
チャールズ ラーキー(B) ミズ ボビー ホール(Per)の
名前があった 何だこれは! キャロル「ファンタジー」と
まったく同じリズム セクションではないか
しかも番号はode77020 で「ファンタジー」とはたった2番
違いの73年作
この事実によってキャロル キングとデヴィッドが初めて
生き生きと架け橋を結んだ
ああ こんなことに何でもっと早く気が付かなかったんだろう

 LP盤にそっと針を降ろしてみる
デヴィッドが奏でる限りなく優しいフレーズは コードブロック
からオブリそしてキメに向かって畳みかけるところまで
まさに変幻自在に流れを作っていく

 針は「ブラザー、ブラザー」を奏でている
キャロルがマーヴィン ゲイの「一体どうなっているんだい?」に
刺激されて作ったとされるメッセージ ソングで
彼女は「ファンタジー」アルバムの一曲めにこれを配した
そう「ホワッツ ゴーイング オン」の盤のように

 え! 何だこの聞き覚えがある声は!
「ブラザー、ブラザー」の背後で聞こえてきたのは
他ならないキャロル キングの声だった
アルバム パーソネルには何故か漏れてしまっているのだが
このソバカス声は 彼女以外の何者でもない

 同じ時代の白人シンガー ソングライターと
同じ時代の黒人スタジオ ギタリストとの邂逅
音楽を丁寧に聴き進めていけば 
こんな虹のような偶然にも出会える
そんなことを思わずにはいられない瞬間だった


  *本文は筆者がThe Dig誌96年のNo.8号に
寄稿した「お宝探し苦労自慢」を大幅にリニュー
アルして書き直したものです










2006/9/28

祝!デヴィッド T 再発!  

朗報です
素晴らしいソウル ジャズのギタリスト、デヴィッド T ウォーカー
Ode時代の3作品が遂に世界初CD化となります
発売は12月でちょいとまだ早いですが
これはニュースです
彼の初期3枚に関しては以前PヴァインでCD化されたのですが
やっとやっとそれに続く時代がすくっと見渡せることになりました

とくにPress Onには刺激を受けたワタクシですが
そこら辺のエピソードを以前Dig誌に書いたことがあります
それを近日ちゅうにここに再録したいと思っていますので
お楽しみに

2006/9/26

他者によって生かされている自分  文学

自分がすっかり遠くに置き去りにしてきてしまった記憶や場所が
他者のなかに宿っている
そんなことに気が付く時は 正直ほっとする
気が付いて良かった と

他者という回路を通して自分を発見する
言い換えれば 自分は他人によって守られている
そうした関係性に人間という営みの大きさも 滑稽さもあるような気がする

今日 母から手紙が届いた
彼女のなかのとても静謐な場所に
僕がいた




2006/9/25

サム ムーア〜魂が蘇る場所のこと  

 サム ムーアの取材が無事終了しました
もっとも電話インタビューで現場は通訳さんにまかせっぱなしでしたが
想像通り 自分の言葉で自分の音楽をきちんと語る人でした
話は新作のことから オーティス レディングの思い出
そして「生きていくための人生の秘密」についてまでを 沢山

 ブルース ブラザーズの話を振ると さすがに複雑な表情を見せたけれども
そんなことも含めて 実に人間くさい人だと思った

 「栄光のサム&デイヴの日々を今 優しい気持ちで振り返ることが出来ますか? 」と
尋ねたら 深い言葉 慈愛に満ちた言葉が返ってきました

  



2006/9/25

夕暮れの風 友だち そしてロック音楽  Rock N Roll


 誕生日DJ@バードソング カフェ お陰様で盛況に
終わりました 謝辞は過去ログのトラックバック欄に
書かせて頂きました
ありがとうございます

 みなさんが盛り上げて頂き よれ気味のDjもなんとか^0^
バードに行くまえに ちょいと一杯! ということで
同級生の梅澤くん 佐々木くんと新橋で焼き鳥を一緒に
夕暮れの風に包まれながら 飲みました

 以下 プレイリストです

ブルース スプリングスティーン  ザ タイズ ザット バインド
同   E ストリート シャッフル
ジェット セッツ ライディン イン マイ カー
佐野元春 冒険者たち
ロバート パーマー エヴリカインダ ピープル
スキッター ディヴィス&NRBQ いつか王子様が
ジョン ハイアット バッファロー リヴァー ホーム
サンボマスター その温もりに用がある
ニック ロウ 恋する二人
ポール マッカートニー 心のラヴ ソング
キャロル トンプソン  ハッピィ ソング
ジャネット ケイ ザッツ ホワット フレンズ アー フォー
ジュニア ウォーカー ホワット ダズ イット テイク
ヤング ラスカルズ ベイビー、レッツ ウェイト
キース リチャーズ ラン ルドルフ ラン
クリーデンス  トラベリン バンド
シュガー ベイヴ ダウンタウン
ヴァン モリソン ディッド ユー ヒールド?
キンクス デヴィッド ワッツ
エルビス プレスリー アイ ガット スタング
仲井戸麗市  エピローグ
ユートピア  抱きしめたいぜ
トム ジョンストン リーチアウト フォー ラヴィン フロム ユー
ボビー ウーマック デイライト
ボビー ムーア サッチン フォー マイ ラヴ
デヴィッド ボウイ ヤング アメリカンズ
ジミー スミス レッツ ステイ トゥギャザー

   ☆   ☆   ☆

山下達郎  夏の陽
ニール ヤング 消えていく氏に
アリーサ フランクリン 二人の架け橋

また いつか
道しるべと荷物をもって

           小尾 隆











2006/9/25

彼女が彼に会いにいく  Rock N Roll

 私がプレゼントした花束を胸に抱き じっと見つめ
香りをかいでから 「ありがとう」と言ってくれた
佐野元春

 花束なんて数えきれないくらいもらっているだろうに
今 生涯で初めて こんなにも美しいものを手にした
とでもいうような表情を見せてくれた 佐野元春

 エレベーターの扉が閉まる 最後の最後まで
見送ってくれた 礼儀正しい 佐野元春



   ※作家の小川洋子さんが佐野元春と会見した時の
   話です
  (「ユリイカ」04年2月号の特集 小川洋子より
   彼女自身の言葉を転載させて頂きました)




2006/9/23

戦争と平和〜二人の理由  Rock N Roll

以前も書いたけれども 僕の祖母は違う男で異なる子供を5人産んだ
戦前と戦後で彼女の夫は違うのだ
彼女は戦前に僕の二人の叔母を産み  戦後に僕の母を含む三人を産んだ
同じ体から生まれた 片親だけが違っていた
満州から引き上げた祖父は 戦後タイヤキ屋で生計を立て
僕の母を産んだ 諏訪の町からは湖が見渡せた

一つの心と 半分が違う血
それでも 僕の母を含む5人は仲が良かった
装っていたとは思えない 
むしろ戦後の動乱のなかで祖母は懸命に祖父を守り 手伝った
祖父は国鉄に復帰出来なかった
タイヤキ屋からは 諏訪湖の水面が見えた 輝いて見渡せた

彼は何も語らなかった 屋台を守った
彼女は屋台に水を運んだ 余分なことは一切言わない人だった
まるで埋め合わせをするように 彼女の5人の子供たちは笑みの渦にいた
戦前も戦後も関係ない
この子たちは私が産んだ子です と彼女の眼が言っていた
彼女はただ水面を見つめていた

祖母からは結果 二つのことを僕は教わった
「血縁なんかどうでもいいじゃん」という ざっくばらんな気持ちと
違う血でも 仲良くやっていこうじゃん という とてつもない意志を
付け加えるべき言葉が 何も見つからない
彼女はただ用水路から湖に漕ぎ出していく流れだけを見つめていた

水面はとてもきれいな月を照らしていた
水面が彼女の心を映していた





 














2006/9/21

お知らせ〜小尾隆生誕記念DJパーティ  

え〜と 今日はお知らせです
不肖なワタクシ、オビンを祝ってしまおうというDj イヴェントが間近に迫ってきました
バードの店主梅澤くんと ガレージパンクの魂の守護者ササキテツヤが提案してくれました(多謝!) 

9月24日sun 18時〜@中目黒バードソング カフェ
「小尾隆生誕祝賀会〜おびっちs Birthday Dj」
dj〜小尾、キクちゃんなど
(連絡先 場所等は当 blogのリンクからバードソング カフェをクリックして下さい)

たぶん混まないと思いますので よろしくお願い致します
ゴキゲンな音楽ガンガン回します(要するに自分の誕生日イヴを自分で人様の家をお借りして
祝ってしまおうという感じかあ(苦笑)

Let The Good Times Roll !!












2006/9/18

Thanks! Nice Folks  

みなさん 僕のBlogをアクセスして頂きありがとうございます

まあ そんなに肩肘張らないでやっていきますね
正直 立ち上げるには怖い気持ちもありました
僕を知っている方ならよくお解りの通り
気まぐれで 我が儘で ときに尊大で いい加減な奴のブログなので
その分 背負うべき荷物も多いかな と

でもそんなモヤモヤを吹き飛ばすのがロックンロールという音楽ではなかったでしょうか?
一歩踏み出す どこのものかも解らない扉を叩いてみる
知らない場所に行ってみる 知らない町の音楽から想像の翼を広げていく
僕はそれがロック音楽だと思っています
だったら 言い訳も留保もシニカルな感情も この際なしにしよう
そんな感じ方をする僕の背中を押してくれたのは まさにロック音楽であり
優れた(と僕には思える)小説です

リンクも進めています
僕が背伸びしないで自然に向き合える「顔〜faces」を持った人たちから始めてみました
でも あるない なんてツマラナイことはロックンロールとはかけ離れた心なので
そっと胸にしまってください どうか

say it loud 3の掲示板との使い分けに関しては 本人もまだ把握しておりません
ただ板では僕はもっと皆さんとの交流をしたい
そんなことを ぼんやりと考えています
そう 教室の後ろ側の黒板にチョークで書き殴られた ざっくばらんな言葉のように

トム ジョンストンは79年のソロ アルバムに こういうタイトルを冠しました
Everything You've Heard Is True と
きみが耳を澄ませてきたことはすべて本当のことだよ と
音楽への無償の愛  何かを信じようとする気持ち
走り出してしまいたくなるような心の流れ

バカヤロー こんなこといちいち説明させるなよ
今夜もE Street Shuffleで踊ろうぜ!
















2006/9/18

キャロル キング〜裸足で彼女は歌い始めた  Rock N Roll


 「タペストリー」(71年)のプロデューサーであるルー アドラーは
「彼女がすぐ近くで歌い ピアノを弾いているような録音を心掛けた」と
回想しているが 実際このレコードの主人公もカーリーヘアにセーター
ジーンズに素足という飾らないいでたち 顔にはまだソバカスも残っている
のだ

 その音楽はそっと語りかけてくるような親密さがあり R&Bに根ざした
コクのあるビートがあり 不器用な歌いぶりはかえって歌に切迫感を与えている

 またこのアルバムはキャロル キングの成長物語といえるかもしれない
天才少女作曲家としてデビューした50年代末の頃の如才なさに代わって
大人の視点が備わっていることに驚かされる かつてシュレルズに提供した
無邪気な「ウィル ユー ラヴ ミー トゥモロー? 」は祈りの歌へと生まれ
代わり 「ナチュラル ウーマン」にはウーマン リヴ的な主義主張ではなく
男性との関わりのなかで自分を発見していこうとするしなやかさに溢れている
そして「きみの友だち」で差しのばされた友愛の手に気が付く時
聞き手は自分のなかに温かい川が流れていることを知るだろう

 「タペストリー」を思いつめるような気持ちで聞く女性がいたとしたら
僕はその人に恋をしてしまうかもしれない


  *「ロック栄光の50年 vol10〜1971年」(講談社ムック)にobinが
   書いた原稿を再録しました

2006/9/17

冒険者たち〜もし音楽が語るのなら  Rock N Roll

一度封印してしまった音楽家と再び出会う
佐野元春とは僕にとって まさにそんな表現者だ
妹の部屋には「ヴィジターズ」があった
僕は思い起こす 僕の部屋に埃を被っていた「ハートビート」のことを
ランディ ニューマン「マリー」を好きだった佐野のことを

80年にデビューした佐野の衝撃は 今もなお忘れられない
「バック オン ザ ストリート」のジャケットでポーチから降りてくる彼の姿は
僕にはこう聞こえる
「もう かったるいよ、日本のフォークもロックも」

ことさら悪びれるのでもなく シニカルな衣装を纏うわけでもなく
佐野は街のど真ん中から 歌を作った まるで埋め合わせをするように
時間という残酷に逆らうように 

たとえ現実が佐野が描くロマンティックな考察を裏切るとしても
僕はたぶん佐野の音楽を聞くだろう
maybe baby
人はそれをロックンロールと呼ぶ

街角から航海し始めた「アンジェリーナ」の物語に終わりはない














2006/9/16

月は満ちて 時間がない  文学

恩田陸の「夜のピクニック」を読んでいると ハイスクール時代に戻ったようなワクワク感と同時に
瘡蓋を剥がしたような痛みに襲われる
高校3年生がたった一日 夜のピクニックに出掛ける それだけの出来事のなかに友情や血縁
あるいは戸惑いといった感情が波のように寄せは返す

結論なんか求めない
ただ僕は物語の迷宮を彷徨っていく
そう「ジングルジャングルの朝に連れていっておくれ」と歌ったバーズ「ミスター タンブリンマン」
の主人公のように



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