東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2007/4/8

友部正人「遠来」  Rock N Roll

きみがニューヨークにいるのと同じように
僕は東京にいる
きみがニューヨークでアパートを借りているのと同じように
僕は東京で借家住まいだ
きみはニューヨークで新しい友だちを見つけただろうか
僕は東京で見つけたよ
そして僕もきみも東京とニューヨークで
歌のことを考えている

きみがインドにいるのと同じように
僕は東京にいる
きみがインドで丘の上の大木を見上げているように
僕は東京で庭の木を見上げている
きみはインドで赤いけさを着てお祈りしているという
僕は東京でコーヒーを飲みながらお祈りしているよ
そして僕もきみも東京とインドで
湯気を立てて晩ごはんの支度をしている

きみがフランスにいるのと同じように
僕は東京にいる
きみはフランス人の書類第一主義のやり方に腹を立て
僕は日本人のあいまいなやり方に腹を立てる
きみからたまにはおいしいものを食べに行くよと手紙が届いた
僕は東京にいておいしいものってなんだろうと思っている
そして僕もきみも風向きが変わり
ヨットは同じ方に走り始めている

きみが台湾にいるのと同じように
僕は東京にいる
きみは台湾に行ってアジアが見えたかい?
僕は東京にいてこの町もわからない
こんなにたくさんの人が生きているのにという
そんな悔しさに奪われることはないかい?
そして僕もきみも東京と台湾で
捨てるもののなくなったドブ川を眺めている

きみが地球にいるのと同じように
僕は地球の上にいる
夜になるとたくさんの町の灯が
つながってひとつになるのを見たことがある
僕らはいつもどこか遠くから
僕らのいる星を眺めている
そして僕もきみもこの地球の上で
解り合えないまま 距離ばかりを大切にしている


Words and Music by 友部正人
P&C 1983 Japan Records
アルバム「Pokhara」より




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