東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2009/2/16

2月16日  

イスラエルの文学賞であるエルサレム賞を
受賞した村上春樹氏が同賞に出席したことに
対してはさまざまな意見があろうが
村上氏は「私は沈黙するためではなく ここで
意見を言うことを選択した」と受賞および出席
の理由を述べた上で イスラエルのパレスチナ
攻撃を以下のように批判した

*    *     *

「高い壁に挟まれ 壁にぶつかって壊れる卵を
思い浮かべた時 どんなに壁が正しく どんな
に卵が間違っていたとしても 私は卵の側に立つ
壁は私たちを守ってくれると思われがちだが
私たちを殺し また他人を冷淡に効率よく殺す
理由にもなる」

*    *     *

個人というものが わかりやすくもっともらし
い全体へと取り込まれていくことを思う時
村上氏が用いたこのメタファーは 表現者
らしく また有効なものであると私は考える




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