東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2009/4/29

グレアム ナッシュのこと  

映画『再会の街で』には
久しぶりに遭遇した男友達どうしが
街に繰り出し レコード店に入るシーン
があり 彼は棚からLPを取り出す

そのなかの一枚がグレアム ナッシュの
『ソング フォー ビギナーズ』だった
僕自身 『ワイルド テイルズ』とともに
思い詰めたような気持ちで 彼の歌を聞い
ていた時があった

少しばかり遡ってCS&N時代の「レディ
オブ ジ アイランド」も素晴らしい
ナッシュが好むのが解るような さり気
ない小品 クロスビーのコーラスはまる
で さざ波のようだ

英語がまだ理解出来なかった頃もあったし
今でもまったく覚束ないのだが
それでも 耳は成長するらしい
この歌のリリックの最後に出てくるのは
次のようなフレーズだ

「僕らが一緒に始めたことを ともに
終わらせたくない」

ラヴソングの文脈で作られた歌詞が
そのままナッシュの理想主義までの結び目
を作っている












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