東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2009/7/3

レヴォン ヘルム〜南部へと還る旅  

70年夏のカナダ横断ツアーで初めてデッドと一緒に
なったザ バンドの面々が「西海岸のヒッピーも
俺らと同じルーツを持っているんだなあ」と漏ら
した話はあまりにも有名ですが レヴォン ヘルム
の新作『エレクトリック ダート』の冒頭曲に
ハンター=ガルシアの「テネシー ジェッド」が
選ばれていることを重ね合わせてみると 何とも
感慨深いものがあります それだけ西海岸とウッド
ストックとは距離的にも土地の慣習的にも異なっ
ていたということでしょうが 素晴らしい出来の
この「テネシー ジェッド」を聞いていると
デッドもザ バンドもベーシックな部分では共通
していたんだな と思いを新たにするのでした

古くはウッドストック マウンテン レヴューの 
メンバーでもあったラリー キャンベルのプロデ
ュースは たとえば今をときめくジョン ヘンリー
のように妙にコンセプチュアルであったりすること
なく(私が好きでないだけの話しですが)
ナチュラルな音像を控えめに提示するだけで まさ
に質実剛健といったところ 実に好感が持てます

同じくキャンベル制作の優れた作品に 今年始め
にリリースされたヨーマ コウコネンの新作があり
ますが そのヨーマ作と私は同じような匂いを感じ
ました こちらも同じくウッドストックにあるレヴ
ォンのスタジオで録音され レヴォンも参加してい
るので 似ているのはまあ当たり前かもしれません
けれど こちらにもデッドの「オペレイター」が
カヴァーされていたことに 奇妙な符合を感じずに
はいられません

話しをレヴォンの新作に戻すと 他の選曲も彼の
アイドルであるマディ ウォーターズが2曲
ステイプルズ1曲 ルイジアナ出身のランディ
ニューマン1曲と レヴォンの故郷である南部に
源泉を求めていることは いままでとまったく変わっ
ていません 一時は喉頭癌が深刻だったレヴォンです
が すっかり回復した様子で 張りのある声が復活
していることが何より嬉しいです むろんあのタメの
ある 樹木がしなるようなドラムスも健在です

音楽はブルースからゴスペル、ザディコからニュー
オーリンズジャズまで彩り豊かに運ばれていきますが
音楽的に新鮮だったのはハッピー トラウムの「
ゴールデン バード」 マウンテン音楽の要素が
濃厚なフィドルやダルシマーの演奏が次第にアイルラ
ンド音階のような広がりを見せていきますが
ここでもラリーは ”史実” を
説明したり俯瞰するような野暮はしていません 
幅広く弦楽器をこなす彼は きっとプレイヤー気質の
制作者なのでしょう

ヨーマやレヴォンのように直接レヴ ゲイリーディヴィ
スやマディの生演奏に接し 教えを授かった世代を
ロック音楽の第一世代だとすると 彼らの高齢化や
人生という舞台からの退場には やはり言いようのな
い寂しさを感じずにはおれません これは良い悪いや
価値の有無ではなく 第二第三世代にバトンが渡され
ていけばいくほど 直接の伝承の機会は減っていくわけ
ですから(色々な意味でウィルコの新作も楽しみです)

とはいえ カラっと乾いた気風の良い風情は往年の
レヴォンそのもの 思わずサザーン ホスピタリティ
(南部流おもてなし)という言葉を思い起こさせます
そう 毎日のパンや水が必要なように 毎日の太陽や
雨が欠かせないように いつまでもレヴォンには
ドラムを叩き 歌っていてほしい そんなことを願っ
てやみません






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