東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2008/8/21

グレイトフル デッド〜鷹揚なスピリット  Rock N Roll

「おっ何だ このスレンダーなお姉ちゃんは スカル&ローゼズ(註1)の
Tシャツを着てるよ」と思ってよく見たら 女優の三船美佳さんでした
これで交際など申し込んだら 私は間違いなく警察に突き出されていたことでしょう(笑)
しかも人妻だし(笑)

というわけで デッドグッズも本体の音楽と離れたファッションとして独立しているので
デッドのシャツを着ているからと言ってうっかり話しかけ「きみ 72年の西独ライブの
サウンドボード音源持ってる?」などと訊いたら 変態ジジイ扱いされること間違いなしの
世知辛い昨今です

それとは対照的に 今から思えば70年代は暢気な時代でした  互いにデッド好きだと
判るとアイ コンタクトしたり 「お兄ちゃん、これ食べるかい?」などと言ってくれ
たり そんな光景は日比谷の野音あたりでは当たり前だったのです 紫の煙も漂ってき
たし(笑)

とまあ 嘆いていてもしょうがないのですが デッドを聞いていつも思うのはある種の
鷹揚さです 私が初めてサンフランシスコに行ったのはもう随分前のことですが 第一
印象はとにかくアメリカはでかい、広い、ということでした これは単に物理的なこと
ではなく 音楽にもそうした広い心、スケール感のようなものが確実に反映されている
のです

グレイトフル デッドはアメリカのそんな広さを最も雄弁に感じさせたグループでした
音楽的な語彙の豊かさは言うに及びませんが いわゆるお勉強色は皆無であり 基本
的にはだらだらと(笑)いつまでも演奏し続けること 聴衆と音楽をシェアすること
に最大の価値を見出したバンドでした 

私が今聞いているのは ライノが04年にリリースした3枚組の『Rockin The Rhein
With』というCDで 嬉しいことに1972年の4月24日に西ドイツのラインホール
で行われたライブの模様がフルで収録されています

72年の彼らと言えば 古くからのファンであれば『ヨーロッパ 72』を思い起こす
ことでしょう ミッキー ハートの一時的な離脱でツイン ドラムス(パーカッション)
の一角を失うというハンデはあるのですが 全体的に安定した演奏で初期デッドの評価
を高めた忘れ難い時期です まだピッグ ペンも健在でブルージーな歌声を披露してい
ますし 新メンバーであるキース&ドナ ゴドショウもバンドにうまく溶け込んでいます

しなやかに飛翔していくガルシアのギター 軽やかにアクセントを付けていくボブ ウエア
のギター 弾力豊かなフィル レッシュのベース、、、こうした恒久の流れを感じさせる
雄大な演奏をまえにすると 音楽にとって古さも新しさも関係ないといった考えに及びま
す いやむしろそうした時間軸をあえてぶらせていくような覚悟さえ デッドの音楽には
感じられます 

「デッドの音楽は長い旅のようなものだ」とは けだし名言だと思います 私はデッドの
ことを思う時 果てることなく流れる川をイメージします きれいな水を運びながら
多くの支流を作り山々を下りながら やがて大海へと辿り着く そんな川のことです
そしてその川は朽ちることを知りません


(註1)「スカル&ローゼズ」
 デッドが71年にリリースしたライヴ盤『Grateful Dead』(Warner Bros. 2xs1935)
 のジャケットには  Kellyによる骸骨と薔薇をあしらったアートワークが使用されて
 おり ファンの間ではやがて通称『スカル&ローゼズ』として定着した 数あるデッド
 のデザインのなかでも 古くから親しまれてきた 人気の高いデザインである






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