東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2009/10/13

大田区の向こう側  

12日は京浜ロック フェスティヴァルを見に
川崎の東扇島へ行く
川崎駅からバスに乗っていくといわゆるコン
ビナート地帯と呼ばれる工場や倉庫が忽然と
立ち表れてくるが その海岸地帯でコンサー
トは行われた

久保田麻琴から細野晴臣までの
日本のロック史を瞬時に凝縮したような
出演者の顔ぶれも 管理色を強めるので
ないユル〜イ雰囲気も フジやサマソニに
二の足を踏んでしまうような 40代50代の
ロック ファンを野外へと連れ戻し あの
時代を知らない若者たちをも引き込んでいく
そんな意味では狭山のハイドパーク フェス
を思い起こさせるような理念を掲げているの
だろう  出演者たちが客席に混ざって談笑
し 再会を祝し 杯が重ねられてゆく

藤田”洋麻”洋介が売店近くで微笑んでいる
新井健太が芝生に座っている
西田啄が声を掛けてくる
彼らには英雄的な意識などこれっぽちもない
そんな垣根のなさも
選ばれた演奏家たちのオーガニックな音楽と
しっかりと共振していたように思える

オレンジ カウンティ ブラザーズが「俺たち
はこれしかやらないぜ!」的な存在感を見せつ
ける こればかりは時代に寄り添うことを一切
せずに好きな音楽を続けてきた不器用な男たち
の大いなる凱旋であり ささやかな勲章と呼ぶ
べきものだろう 飯田雄一のゴツゴツとした
ヴォーカルには お勉強や学習ではけっして
得られない本物の匂いと味がいつも横たわって
いる この人はなんて大きく 逞しく ときに
人を切なくさせるのだろう
今回はガルフ コースト音楽への傾倒など
何かと接点が多いザディコ キックスとも
共演して おおらかで賑わいのあるノリで楽し
ませてくれた

空が葡萄色に染まり 夜風が頬を撫でる頃
最高の場面で 東京ローカル ホンクが登場する
なだらかな丘陵を描いていくようなサウンドスケ
ープがひたすら心地佳い 出演者が目まぐるしく
変わり 時間的な制約のあるこういうフェスでは
繊細な曲を並べるよりは 最初から飛ばしていっ
た方がいいと判断したのか この日はジャム的な
長尺ナンバーで演奏面での実力を発揮した ギタ
ーの波が放射線上に広がっていくような開放感を
野外というロケイションで味わうという贅沢を
噛み締める

その後続いた友部正人 3人ムーンライダーズ
あがた森魚の演奏もホンクが務める ホンクの
柔らかな輪郭を携えた音を背に歌いたいという
友部たちの想いも 僕には解るような気がした

ムーンライダーズの名曲「くれない埠頭」も
終盤に用意されたが 川崎というこの日の場所
といい はちみつぱいの”大田区の向こう側”の
匂いを感じさせるホンクとの共演といい 図らず
とも「くれない埠頭」を演奏するには 何より
の光景であり 出会いであり 幾つかの感傷で
あったと思う

昨年の一回めは 何かと不備が伝えられていた
(僕は昨年は行けなかった)京浜フェスだが
今年は好天にも恵まれ また運営もスムースであり
トラックの横付けステージ二つによる
交互の演奏も正解だった

システマティックであったり
”上意下達” ではないライヴ パフォーマンス
これこそは本当のライヴのあり方であり
日本のロックが長年に亘って培ってきたサムシング
であるだろう
そんなことを いつまでも信じていたい







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