東京ローカル・ホンクの木下弦二さんから初めて電話をもらったのは もう二年ほどまえの夏だったろうか その時にどういう会話をしたのかは忘れてしまったが 僕たちのバンドを知って欲しい 聞いてみて欲しいという彼の気持ちだけはまっすぐに伝わってきた これも何かの縁(えにし)かと思いその後の僕は彼らのライヴに幾度となく足を運び またこれからも もっとライヴに行ってみようという思いは募るばかりだ 東京ローカル・ホンクの良さをどう表現すればいいのかはよく解らないのだが 今日もまた僕と同じように東京の空を眺め 同じような街並を歩き 戸惑いながらも呼吸をしていることは間違いなかった そんな風に自分の側にいるという親しみを持てるバンドに出会ったことに奇跡にも近いような感慨を抱いた まるで広告代理店が書いたような気取った歌詞や 見せかけのポーズや虚勢 あるいは英雄的な態度に終始しがちな日本の音楽シーンのなかで 彼らはいつもの商店街を行き交う人々を観察し 各駅停車の窓から流れる雲を追いかけたりしていた 彼らの織りなすサウンドスケープもまた大向こうを張るのではなく 微妙な感情や陰影そして日向の匂いをデリケートに運び込んできた ときには伊豆半島まで遠出したり草の燃える匂いを嗅ぎながら 結論を急がない心のありようみたいなものは形になりにくい でも僕は東京ローカル・ホンクの答えとか結論を求めない音楽のあり方に惹かれ続けている そうまるで池に投げられた小石のように (小尾隆 2009年6月23日:記)

2009/10/16

音楽のような写真〜渡辺真也のこと  

今ぼくの手元には『日本版ローリングストーン』の74年
11月号がある 忘れもしないぼくが高校1年の時購入し
たものだ 情報自体に飢えていた時代だったから
買った本屋の名前まで今でも覚えているくらいだ

その号では復活したボブ ディランが特集され 
ヨーコと別居したジョン レノンが語られ 
「ニクソン最後の日々」という記事があり
新譜レビューではエリック クラプトン『461』が
いささか的外れ気味に紹介されている
映画『あの頃、ペニーレインと』にもやり手の編集者
として登場するベン フォン トレスによるCSN&Y
のツアー ルポが目玉だろうか

さて その時のCSN&Yを観ていた日本人の青年がいた
写真家の渡辺真也さんだ
そんな彼の連載『サンフランシスコ滞在日記』が
今月のレコードコレクターズ誌から始まった
ロックがまだ明るい響きを持っていた時代の回想という
よりは 単身アメリカに乗り込んで写真を志した青年の
かけがいのない日記として ぼくは楽しみにしている
ぼくが地方の高校で無神経な体育教師に体罰を受けてい
た頃 もう渡辺さんはサンフランシスコの空気をたっぷ
り浴びていたのだ

いい文章は書こうと思って書けるわけではない
むしろそんな邪心がある限り それは遠くなる気がする
ぼくのなかに言葉はない
音楽のなかに言葉は宿る
いい音楽がぼくに言葉を運び込んできてくれるのだ

写真はどうなのだろう ぼくは写真の技術は解らないが
やはり何か自分に降りてくる美しいものがあって 
それが写真を撮らせるのかもしれない
ザ バンドや佐野元春がレンズを通して
きっと渡辺さんに さざ波のようなものを立てるのだ
今度彼に会ったら そのことを尋ねてみよう

ちなみに彼はこの時のニール ヤングに関して
こんな風に書き留めている

「気持ちでギターを弾くニール」と

       









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