A Story

2007/10/2 | 投稿者: Maysico

先日のライブ終演後、
聴きに来てくれた同級生が、
打ち上げ兼誕生会という名目で、呑み&食事に連れて行ってくれた。
彼は中学・高校を通じての同級生だが、
在学中さほど親しいわけではなかった。
しかし、昨年私が20年ぶりに高校の東京組呑み会にたまたま参加して以来時々顔をあわせるようになった。
今や福岡ライブの協力者のひとりとなっている。

思えばこの東京組呑み会に顔を出したことが点となって、今に線が引かれた。
カッコよく言えばそんな感じだ。
そして協力者の同級生の多くが、
つい最近親しくなった、そんな人たちばかりである偶然が面白い。
よく知っているはずなのについ最近よく知った。
行かなきゃ一生知らないままだったのだから、縁とはホントに不思議なものだ。

おっと長くなった。
ライブ後の宴は、6人でオトナな感じで盛り上がり、気がつくと午前2時。
”オレたちは(仕事で)毎日こんな感じやけん、時間は構わんよ”
とはいえ、さすがにそろそろおひらき。
こんなことは滅多にないから、大枚タクシーだってゼンゼンOK、そんな感じでいい気分だった。
(我が家はタクシーとなるとファンキーな距離にある)

しかし、この心優しい同級生Aは、自分のポケットから2枚タクシーチケットを取り出し、私と、同席した私の友人親子に”これで帰れ”と言う。
”そんなぁ・・・ご馳走になった上に、
いくら厚かましい私でもさ、そこまでできんよ”
などと言っているうちにAは、そのチケットが使えるタクシーに迎車依頼をしてしまった。
2台。。

で、ここからが偶然。

1台目に来たタクシーに友人親子を先に乗せ、私はAと立ち話して2台目に乗った。
Aは自腹であぁ遠くまで帰るらしい!! 

やってきた運転手さんはとても品が良い。
乗車してやがて、運転手さんが話しかけてきた。

私の楽器に気がついたのだろう。

”どこかで演奏でしたか”
”ええ、この近くで”
”それはサックスですか”
”そうですよ、よくご存知で”
”私はスタン・ゲッツなんて大好きでねぇ”

なんて調子で話が始まった。

吉祥寺から三鷹あたりを抜ける通り。
深夜ゆえクルマも少ない。
ラジオも何も音のない静かな車内。

ジャズの話で静かに盛り上がり始めた頃(とても物静かな方だった)
運転手さんがポツッと言った。
”私はもう40年以上も前、トランペットを吹いていましてね、一応NYで頑張ってたんですよ、
・・・・・ある時、一世一代のチャンスって言ったら大げさだけど、こんな人たちとやれるんだっていうセッションで大チョンボしましてね、本当に恥ずかしいくらい・・・
その帰りにトランペットをハドソン川に捨ててしまいました。”

・・・どうして人はだんだん、うまくやってやろうという欲が出るんでしょうね。

それからいろいろな話になったが、そんな感じの話をした。

外を見るとこのあたりは、これまた偶然にも自分にとって忘れられない場所だ。
以前、自分にとってもこれはというチャンスを与えられたにも関わらず、全く不甲斐ない演奏に終わり、帰りのタクシーの中で運転手さんに半べそかきながら、
この世の終わりかってくらい落ち込んで愚痴った、そんな記憶がある辺りだった。
これが現実であって欲しくない、
真剣に夢であって欲しいって、
本当にガックリきたいくつかの経験、のうちのひとつだ。

そのときの運転手さんは、
”お客さんが、そんなスゴイことができる(音楽をやっているって意味)
ほどの才能に恵まれてること自体、凡人の私にはうらやましいですよ、きっと上手くいきますよ”と慰めてくれた。

けれど、そんなに落ち込んで死にそうなくらいの気持ちだったはずなのに、その夜、私はしっかり寝てしまった!!
そして翌日、突然ご機嫌斜めになった楽器をリペアに出し、ゴハンを食べ、元気に仕事に行ったのだ。

あれほどの絶望(と言ってもいいくらい)があったからこそ、今日まで続けて来られたし、人生にマイナスは必要なのだ。
そのときの成果となるべきことを、残念ながら未だ実現できていない寂しさはあるけれど、それもきっと自然と近く実現できるはず。
こんな話を、同じ景色を見ながら、懐かしく運転手さんに話していることを何だかとても不思議に思います。。。

そんなことを話した。

運転手さんは多彩な人で、その後画家としてヨーロッパで修行、活躍され、今も作品を描きつづけているそうだ。
タクシーに乗っているのは、絵を書く時間が取れるからなのだそうだ。
身の上話もきいて、我が家へ到着。
”絵、見てみたいですね”と言った私に、クルマを停めトランクから自分の作品集を出して見せてくださった。

油絵と水彩。
風景画だった。日本人らしからぬ力強いタッチ。
いい絵だ。

タクシーは一期一会だから、というルール?に反し、先方(A)へのタクシー代の請求のこともあるので(実は、私との話に夢中で運転手さんはメータを倒すのを途中までミスっていたのだ。)
連絡先を書いて渡した。

今日カードが届いた。

忘れていた40年以上も昔の事、
貴女の音に対する真摯な姿に心打たれ、ついつい思い出してしまいました。
これからも心の向かうままに進んで下さい。

こんなメッセージに、
私がこの絵いいですねえと言った
イギリスの風景を描いた作品のコピーが添えられていた。

普段、節約家といえばきこえがいいが、私は(笑)タクシーってあまり乗らない。
自分にとってはちょっと非日常なのかな。
でも、こうしてタクシーの車内で絵を見せてもらえるなんて経験はなかなかないし、何よりこんな話ができる偶然なんて、2台目に乗らなければなかっただろう。

心の向かうままに、か。
今の私にとって何より嬉しいメッセージだった。



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