偶然にホテルから北に数百メートルの所にあるという、三人は連れ立ってマドリッド
の街並を散策しながら店に向かった。時折、雲間から雨が落ちて来て軒下に逃げ込ん
だりしながら歩いた。見覚えのある「LA PRADERA/贅沢屋」はすぐ見つけた。
前にもこのバルへSに連れてきてもらい、アサリの刺身だとか食べた記憶があった。
Sと二人で飲みながら歓談していると、日本人の中年の御婦人方が数人でやはり
日本人の女性がイドに連れられて入ってきた。隣のテーブルでワインを開け食事を
した、話し掛けると、偶然、甲府から来た人達だった。食事が終り、さて、お勘定
となった。女性ガイドは言った「お一人様、一万円です。」さりげなくきっぱりと
言った。言われた御婦人方、顔を見合わせ一瞬、「不信」という疑念が錯綜した。
しかし、誰となく「仕方ないわね・・。」という声が小さく聞こえた・・・
それぞれ財布からお札を出して支払った。帰り仕度をして席を立った御婦人方に
「お気をつけて・・・」と僕は言ったが、気まずそうに「どうも、ありがとう。」
と言って出て行った。日本人が日本人をカモにする・・・何か言い様のないものを
感じたが、それが世界であって、腹をくくって生きることが大切だとも思った。
●
友人Sはすでに店に来ていた、数年ぶりの再会、僕は奥さんへのお見舞いを手渡した。
この友人Sは最初に出したデザイン事務所の近くで昼は喫茶、夜は酒場に変身する
「10時10分・ディズルデイ」という、お店を夫婦でやっていた。
だから朝は事務所に入る前にモーニング珈琲を飲み、夜は仕事で勝っても負けても
時々飲みに立ち寄った。この奥さんが横浜出身で利発な会話が気に入っていた。
Sもインテリタイプで子連れの彼女と一緒になる前は漫画喫茶をやっていた。
カクテルも作ってくれるのでジンライムやマティ−ニなどを楽しんだ。
そうした都会風の匂いが好きだったので、時には仲間のカメラマンだとか世話にな
っている写植屋、印刷所の営業、付き合いのある連中を招いてパーティーの真似事
をやったりした。仕事をくれるお客も大切だが自分を支えてくれる人を大切にする
ということを誰かに言われたこともあったが、何か皆で何かをつかんでみたい。
そんな青い夢想があった。
彼ら夫婦が、その後、留学するといってスペインへ行ってしまった・・・・。
たまに帰国すると手土産を持って現れたが、次第に音信は途絶えた。しかし県の海外
デザイン研修の際、彼らの家に投宿、世話になった。息子さんにはマドリッドのデザ
イン事務所の訪問に通訳をしてもらい無事、研修を済ませることが出来た・・・
ただ、心を込めて礼状を出したりしたが何の沙汰もなく奥さんのY子さんには、二度
とも会えなかったのが今も心残りである。
人の縁とか出逢い、そして絆とか、わずらわしいと思う人間もいるのかも知れないが
人は一人では生きて行けない・・出逢いと絆は大切だと思う。
さりとて利害だけの付き合いも虚しい。人は相性もある、夫婦であっても時には淋し
い思いをする時がある・・・。
それは、互いが近づき過ぎて大切さが見えなくなってしまうからだろう・・・。
だから、たまには別れた生活をするのがいいかも知れない。こうしてスペイン旅行な
どと離れてみれば、良く解る。(笑^^)あの矢沢永吉など羨ましいと思う時がある。
ライブで巡業中は家族と離ればなれ^^仕事を終え、大きな獲物を担いで家に帰る気
分は男だったら、その気分は分るだろう^^そう、男は荒野を彷徨う狩人。
女はそれを待ち、家を守る。それが共働きになるから男女共同参画などといって男が
段々、虚勢されてしまう・・・そこへいくとスペインは闘牛だ、フラメンコなどと、
男と女の領分がわきまえてある・・・・。話が反れた、スマソ^^
●
店内は闘牛のポスターが所狭しと壁に貼ってあり、赤、青、黄の原色でにぎやかだ。
丸いテーブルを囲んで早速ワインを開け乾杯!刻んだトマト、サラミにハモン(ハム)
オリーブの塩漬けなどスペインの風味を堪能する。飲むほどに饒舌となるH、笑いの絶
えない宴会となった。その一部始終を時々ビデオで撮った。店の主人も近寄ってくる、
何やら地下から持って来たワインの講釈をする。サービスで飲ませてくれるのかと思っ
たら、買わないか?営業だった。酔いに任せたHが買ったようだ・・・10.000円?
そりゃ高い、きっと日常なら決して買えないはずだが旅の気分が異国の匂いに、すべ
ってしまう。すっかりボラれて宴は終焉、主人のグラ〜シャス!聞きながら店を出た。
夜更けのマドリッドの通り、オレンジ色の街灯に浮き上がる男達をビデオで追った。
退職し年金生活に入ったM氏、子育ての真っ最中のH、子育ての終った僕、スペインと
いう異国に移り住んだS。それぞれの男の人生が酔いざれてフラフラと映された。
ホテルに戻ると、やっぱあ二次会だあ。バーの席に着くとまたワインを開ける、
僕はウイスキーの水割りを掲げ、また自分の人生にスペインの夜に乾杯となり男共は、
それを飲み干した。
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