さて、サングラスを水中メガネに代えて海へと向かう。ボディボードで遊ぶ子供達と
E氏が見える。灼けた砂浜を歩き久し振りの海に何か照れてしまう気分だ。
押し寄せる波を踏みわけながら沖に向かう。潮の匂いが鼻をつき一気に海中へ潜ると
砂が波で舞い上がる濁った光景だが何かいい知れないひんやりとした解放感がある。
泳ぐ真似をしたりラッコのように仰向けになって波間に浮かび太陽の眩しさで目を
つむっていると波の音と人々の嬌声がBGMとなって日常の緊張した身体をほぐしてく
れる。生命は海から派生したというが、その遺伝子が嬉しがっているようにも思える。
当時、隣町の町営プールによく通ったが、人工的なプールではこうした思いにはなれ
ないだろう。
まだ行ったことはないが南洋の海の紺碧の美しい海の映像をテレビで見るがいつか彼
女と行ってみたい。そういえばハワイに一度行ったことがあるがアラモアナの浜辺を
歩き回っただけで持参した地元の桔梗屋という菓子メーカーの確か「くるみパイ」だ
ったと思うが、それを浜辺に現地の若いファミリーがいたので「ジャパニーズ、ケーキ、
プレゼント!」などと夫婦に持たせカメラに納め帰国したら「世界のくるみパイ」など
と新聞広告のプレゼンでもしようと思ったが135mmのレンズで撮った写真は露光オ
ーバーで使い物にはならなかった。矢沢に触発され、あの頃は何でもやってやろうと
息巻いていた36才の頃だ。
縞模様の水着の彼女もやってきた浮き輪にしがみついて太陽みたいな笑顔で楽しそう。
僕も浮き輪にまとわりついて何だか出会った頃みたいな気分になった。メタリックな
ピンクの浮き輪から跳ね返った湯河原の太陽の光が彼女の肌をピンクに染める。
浜に戻って、持参した食べ物と飲物を広げ、我々大人は渇いた喉にビールで乾杯!
やっぱ海辺で飲むビールはウマイ^^
飲んでは泳ぎ日焼けしては泳ぎ照りつける太陽で肌が赤く灼けてくる・・・
子供達といえば砂浜に何か描いたり作ったり楽しそう、しばらく遊んで部屋に戻る
途中、マンションのプールの水道で砂落とし。青い水面に飛び込んで、またひと泳ぎ。
部屋のお風呂は地元の温泉がひいてあるそうで着替えがてら入れてもらうと冷えた
身体に適度な温度のお湯が気持ちよかった。腕時計と海水パンツの跡以外ほんのり赤
く灼けた身体になっていた。
夜は近くのボーリング場へ行ったり海岸で花火をしたり湯河原の町の夜景を眺めながら
潮風に吹かれたりした。真鶴岬へ行ったこともあった。三ツ石というラクダのコブのよ
うに並んだ大きな岩を前方に眺めながら岩場で遊んだ。打ち寄せる波、岩にへばりつい
たフジツボの間に2センチ位の小さなタニシのような貝をみつけると「それって食べれ
んダよ^^」と後ろにいたE氏が言う。食えるとなると目をこらして探すと、いるいる。
指でつまんで集め始めた。
そのうちベーゴマみたいな貝も「アッそれはシッタカ、うまいんだよ^^」と教えてく
れる。海のことなどさっぱり分らないので感心する。
小さなヒトデや磯の生き物に子供達もおおはしゃぎだった。
岩場にビデオカメラを据えて家でいつでも海にいる気分にと押し寄せる波しぶきを撮影
したりした時もあった。
しばらく磯遊びをして急な真鶴岬の階段を登り松林を抜け部屋の戻ると早速捕れたばか
りの小さな巻貝とシッタカを茹でてもらった。指先ほどの小さな貝の身を爪楊枝でほじ
くり出して口に入れると、それはそれは磯の味が口に広がり冷えた白ワインで流し込み
湯河原の海を堪能・・・それにしても岬の岩場に吹き寄せられたゴミを思い出し、こう
した自然を楽しむためにも大事にしないと。以来、タバコの吸い殻をどこでも捨てない
ようになった。 >つづく

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