新宿駅の人込みをかき分け我々を待っていた彼女の姉と南口で合流。キャンセルし
た予約をもう一度確認してみると姉が携帯でホテルと掛け合った。
しばらくしてOKが出たので日本橋へ一目散。駅から立て横に延びる都会の夜の道
を突き進むとやがてマンダリンホテルの前。瀟洒なロビーを抜けエレベーターに
乗り込むと高級感あふれるフロアに出てインフォでレストランにコンタクト。
無国籍料理だというレストランに三人はなだれ込んだ。
イケ面のウェイターが優しくエスコート、いきなりシャンペインが開けられグラス
に注がれると白い細かな気泡が泡立ち彼女達も嬉々として早速、シャンペインに舌
鼓。38階からの東京の夜景は赤の点滅するビル群が眼下に見え、その向こうに東
京タワーがオレンジ色に燃えている。左手奥には遠くディズニーランドの照明に浮
かんだイスラム模様の観覧車と大輪の花火が幾つも上がっているのが見えた。
プラチナゴールドのシャンペインを眺めていると立ちのぼる白い気泡が時の流れの
ように感じた。シャンペインは口に合わないので彼女に回し、ウイスキーの水割り
を所望すると「シーバスのダブルでございますす。」と別のウェイターがサントリ
ーの南アルプスの水と一緒に運ばれてきた。
磨き込まれたタンブラーグラス、ステンレス製のマドラーで数回スクリューし黄金
色の水割りを一口含むと普段の「角」とは大違いで甘く香り高い水割りだった。
美しい姉妹の脇で硬質感のあるグラスを片手に至福の時間が過ぎる。さっきの中央
道での出来事もこの時間のための演出か?などと36回目の結婚記念日の夜であっ
た。ウェイターが運ぶコース料理に一喜一憂しながらの二人・・・
そういえば彼女と付き合い始めたころ、わざと一度別れ話をしたら翌日、「妹と本
気じゃないの?」と歌舞伎町の喫茶店で二人に突っ込まれたことを思い出した。
あれから39年の時が流れ二人も熟女と化し姉もメニューに老眼鏡、僕もピントが
合わないテーブルの料理に何を食っているのか?さして旨いとも感じない鈍い感性
になってしまった・・・。時々ビデオを回すのは忘れたくない時間だから、やがて
何もかも想い出だけに生きる時、見直してみようと思うからであった。
午前中の村のゲートボール大会の閉会の挨拶で老若男女を前に「人生想い出づくり、
本日のゲートボール大会以上で閉会とします。お疲れ様でした。」と簡素に締めく
くったが後で彼女が若い奥さんに受けてたよと教えてくれた・・・
そう人生は想い出づくりなんだ。願わくば美しい綺麗な想い出がいい。そういえば
昔、醜い苦い想い出は海へ捨てろみたいなことを矢沢のお父さんも唄っていた。
ウェイターが「御目出度ございます。」と差し出された皿にはHppy weddind An
niversaryと描かれてあった・・・それを前に二人の記念写真をデジカメで撮影の
サービスもあってディナーも終了。
タバコが吸いたいと別の喫煙OKのゲストルームに入ったら二人はカクテルが飲み
たいとウェイターを呼びつけ彼女はマルガリータ姉はブルーベリーのカクテルを楽
しんだ。タバコを吸う僕に蝶ネクタイのウェイターが「何かお持ちしましょうか?」
と言い寄って来たが、もう飲む気はさらさらなく、もう充分だと煙を吐いた・・・
後で知ったがカクテルが一杯2.100円、プラス、チャージが400円。
ちなみに普段飲む水割りの一週間分だ(爆^^
金がないと生きていけない都会だが人工の美しさをたまには味合うのもいいかも知
れない特に女性は。
それだけの苦労をさせてきて、この夜がある。ホテルを後に帰路の夜道、街灯が灯
る日本橋を初めて渡った。得体の知れない奇妙な動物が鎮座してるのが見えた。
この橋を始点にして国道が全国へ延びているという周辺は日本銀行や三越、三井グ
ループの本社が建ち並び日本経済の歴史を感じさせる豪壮な建物に圧倒されながら
前を歩く二人の子育て時代の想い出話しや逝ってしまった両親の想い出話しを聞き
ながらビデオを回す僕でした。<おしまい^^>

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