30年前、CHECKMANとして独立しようとした幾つかの理由の一つに当時、傍系店の
新規オープンする郊外型大型店のチラシ広告を制作するにあたり、完成予想図とOPENの
文字で簡単にすませてもいいんだが、それじゃあ俺らしくないと、これからは車社会だ。
郊外の大型店だ。車で買い物をする時代になると思い、家族と車の集合写真を入れたいと
思った。そこで、ある晩、飲み屋で同僚カメラマンにそうした写真を撮ろうと言ったら
「そんな余計ことをしても給料に関係ない。」とぼそっと言われてしまった・・・・・・
飲んでいたせいもあって「なにぃ〜○○ちゃん、おまえそんなことでいいのかあ〜」と
ぶん殴ってしまった。そして「俺はやるから。」と彼に納得させた。後日、マーク2の新
車をディーラーから借り家内や我が長女、会社の同僚、会社関係の人達を集め既に開店し
た一号店の駐車場で子供の乗っていた自転車も持ち込み家内にはフランスパンや野菜など
入れた紙バッグを持たせ新車のマーク2の前で「ハイ、みんな嬉しそうに楽しそうに」と
○○ちゃんにシャッターを切ってもらった・・・出来上がったチラシに満足したが特に誉
められもせず給与が上がった訳ではないが独りで飲んだ酒はうまかった^^。
同僚といえばタイムカードをごまかし残業代をくすねる奴、会社にいながらアルバイト
の仕事をする者、こうして雇ってもらえるだけでも有り難いのにと30才を目前にした頃
こうした人間達とこの先、10年付き合って係長くらいにはなれるだろうけどなんだかバ
カバカしくなって会社の肩書きのつく自分で生きるのか?自分の名前だけで生きるのか?
家内に話したら「あなたの思うようにしたらいい、もしダメな時は私がキャバレーで働く
から・・・」キャバレーで働かせる訳にはいかんと突っ走った訳ですが・・・20余年後、
ある晩、新宿からの帰り、ふと、あの会社があった隣のスナックで飲んでいた○○ちゃん
を開いたドア越しに見掛けた。「おう、○○ちゃん!」と声をかけると人なつっこい顔で
「アッにいッちゃん!久し振りじゃん飲んでいけし。」と招き入れた。カウンターの彼の
隣に座るとサッポロの黒地に金色の星がついた確か中瓶の瓶ビールをグラスに注ぎながら
開口一番「にいッちゃんは□□(会社名)が無くなるって20年前から分かっていたのけ
?」と言った。地元の老舗デパートの子会社だった□□は創業一族の引責辞任で会社も閉
鎖となっていた・・・。
私は目の前についでくれたビールを一気に飲み干すと「何言ってるの^^そんなこと分る
訳ないじゃん、しかしタイムカード誤魔化したり給料に関係ないじゃんなんて言ってれば
会社もどうにかなっちまうさ^^」などと2杯目を注いでくれた○○ちゃんに言ったが酔
いが回ってるからなのか、昔の記憶がないのか笑っていた。
その彼も数年前に逝ってしまった・・・。情けねえ話じゃないか(泣爆^^元上司から
の電話で葬儀の知らせが来たが何か口惜しくなって「すいません、26年も前の会社のこ
とで申し訳ないですが出席しないので皆さんにヨロシク。」と電話を切った。一瞬思い上
がった態度かなと思ったが彼の笑顔を思い出して祈るしかなかった・・・。
それからまた数年が経った時だった、どこで知ったのか事務所へモモを生産販売してい
る男が宅配申し込みの用紙をデザイン製作して欲しいとやってきた。名前を聞くと○○ち
ゃんと同じ苗字で住所も彼の生家に近かったので○○ちゃんの名前を出したら生前付き合
いもあり亡くなったことも知っていて残念だったと一言漏らした・・・。
それからまた一年が経った頃、某商工会の経営指導担当者から建築部会のPR広告を出し
たいので会長さんと打ち合せをしたいと電話があった。約束の時間に行ってみると会長さ
んは、まだのようで担当者と雑談していると20分ほど遅れてやってきた。
現れた会長さんは60才をちょっと過ぎた感じで覇気を感じない良くある工務店のおっさ
ん風で失礼ながら、これはダメだなと一瞬思った。名刺をやり取りして、先ず相手の性格
や本意を聞き出そうと探りのジャブを出す。自己紹介から世間話し、たまたま退社した会
社の話からカメラマンだった○○ちゃんの名前を出したら「おう知ってるよ大将とは一緒
にバンドをやった・・・」という、○○ちゃんは布施明似で長い髪してギターとフォーク
系の唄がうまかったことを思い出した。そして続けて「あの頃は若かった、東京までバン
ドのポスターを貼りに行ったこともあったなあ〜」と会長さんの思い出話になった。
昨今の不況下で彼らの仕事も激減で何とかしたいということなのだが、私は顔見知りの
町内でリフォームや新築改築、耐震だと言葉やイラストで訴求するだけではつまらんと思
い「どうです^^部会のみんなで使う道具をかざして俺達はやるぞぉ〜!という写真を撮
ってチラシを作りませんか!」と提案した。一瞬考え込んだ会長さんだったが何かに気づ
いたのか「よしっそれで行こう!」となった。
後日、同じ町内の写真屋の旦那に依頼して商工会の2階で男共の、その気やる気、本気
を撮った。本当は屋外で重機やトラックに、またがり野郎どもが雄叫びをあげるシーンに
したかったんだが全員が集れるのが夜しかないということで商工会の2階になったがバッ
クを隠すバックペーパーもなく部屋の黒板や掛時計やら一緒に写り込んでいたから切り抜
くのに大変で、中には目を閉じたり引きつった顔もあったので十数カットの中からいいの
を選び合成、さらに町を象徴する文化財の建物を後日、自分で撮影してこれまたバックに
合成した。↓それがこれだ。
いま、その第2弾の製作依頼が来てるが、さして新しいやる気の素材もないようだが何と
かしようと考えている。
公務員だろうが何だろうが一回の人生を如何にワクワクして生きるか?前出の私と同じ
世代のモモの生産農家の男も昨年、市会議員に出馬するというので選挙の個票やポスター
の製作を手伝ったが見事、初当選!これも天空で見守る○○ちゃんの思し召しかも(笑^^
ローンでマイホーム建てたり生い立ちの事情で安定した給与生活もいい、だけど言いつ
なぎ程度の仕事で達成感もなく、茶化して生きるのはつまらんと思うが、しかし、それが
人の世だと、この歳になると覚悟するのである。何も日本人だろうが何人だろうが、やる
奴はやる、世の為国の為と。やらない奴はやらない・・・・・気づいた奴がやればいい。
それでいいのだ(大爆笑^^

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