昭和三十年代は自転車といえば、今の自家用車みたいな存在で移動や
運搬の為の大切な乗り物であった。
隣町の父方の祖父が自転車でやって来たことを覚えている。
お土産はお菓子の最中で、遠くから楽々と早く来れる自転車が
子供心に素晴らしい乗り物に思えた。
自分も乗ってみたいと家にあった自転車を村の路上へ引っ張り出してはみたが、
子供の身体には大き過ぎて乗れない。左手をハンドル、右手でサドルにつかまり
三角のフレームに片足を突っ込んでペダルを踏むという三角乗りを覚えた。
子供用の自転車などない時代、子供なりに工夫をし、子供同士互いに教え合った。
やがてサドルに股がり乗れるようになると仲間を連ねて大久保のプールや釜無川、
時には甲府まで行ったことがあった。
見知らぬ町、見知らぬ場所へ颯爽と風を切って走って行く自転車。
ただ、平地や下り坂は快適であるが、今にして思えば隣町へ帰る時の祖父は登り坂で
大変だっただろう。今はギヤ付きやラクチンな自転車もあるようだ。
そんな自転車もやがてバイクや車が普及して、学生さんの通学か買物のチョイ乗りに
使われるくらいで、愛着が無いのか放置されたりする自転車があるけれど、
哀れに思うのと思い上がった現代生活に自戒するこの頃です。

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