2005/4/8

フリーランスは大人の愉しみ  誉め殺し
しおじ氏と言えば、パッケージ限定レイアウトの提唱者であり、限られた部品をフル活用しつつあらゆるテクニックを動員してフルパッケージでも実現困難な情景を作り上げてしまうその手腕は、彼をしてVRMレイアウト職人最高峰の一人と呼んでも誰にも異論はないだろう。

拙者はしおじ氏というと、テクニックもさることながら、まず思い浮かべるのはフリーランス(実在鉄道をプロトタイプとしない作品)の面白さ。その印象を決定づけたのは2003年度レイアウトコンテストにて審査員特別賞を受賞した「日中横断鉄道」。初めて拝見したとき、頭がクラクラする感動を覚えたことを今でも鮮明に思い出す。海底トンネルを抜けて中国大陸に達し、万里の長城を目指すブルートレイン、というその着想に、脳味噌を鷲掴みにされたかのような衝撃を受けたのは拙者だけではあるまい。未見のかたは幸いにしてまだダウンロードできるようなので今のうちに見ておくことをお勧めする。
この他、しおじ氏には「エジプト」「アラビアンナイト」「シベリア鉄道」「時代劇レイアウト」といった(良い意味で)想像を絶する作品があり、氏のWebでVRMレイアウトをダウンロード出来る他、動画としても公開されているため非VRMユーザーもその世界を楽しむことが可能となっている。

さて。長い鉄道模型の歴史の中にあって「フリーランス」という言葉、そしてその発想には、本来それが持っている魅力に泥を被せる余計な言説がつきまといがちではないか、と考えるのは拙者だけだろうか。特に、昨今の模型製造技術の向上による精密化・廉価化は、多くの鉄道愛好家に実車さながらに再現されたリアルな模型車輌を手軽に入手する機会を提供してきたが、それと平行して「フリーランス鉄道模型」に対し全時代的なブリキのおもちゃ、リアル指向に追従できない人の代償行為というレッテル貼りがなされてきたのもまた事実であろう。
しおじ氏の作品群を拝見するにつけ、こういった誤ったフリーランス観が如何に一面的に過ぎるか、が良くわかる。確かにフリーランス鉄道模型には、製造技術の稚拙さを補うための工夫という一面もあるが、それはフリーランスの世界を形作る要素の氷山の一角に過ぎない。真のフリーランス鉄道模型というものは、氏のレイアウト作品がそうであるように、リアル指向を徹底できる技術力をベースとして、その有り余るパワーを鉄道文化をベースとしつつも現実の制約のない自由な次元へ飛翔するものであるはずだ。言い換えると、フリーランス鉄道模型は、一般的に「鉄道模型」として認識されている「リアル指向の鉄道模型」では飽き足りない趣味人だけが満喫できる、大人の愉しみなのだ。

日本の鉄道模型界の話題を拾い読みするにつけ、全体的な潮流はリアル指向に流れているように見える。12mmHO然り、TT9然り、新たに登場する鉄道模型規格はいずれもファインスケールを標榜しているし、縮尺と軌間の不一致が指摘される16番・Nにおいても、やはり実在車輌の細密再現が至上命題となっているのは否定できまい。が、一方で鉄道模型を「実車を完全に再現できているか、エラーはないか」という観点からしか評価できない無粋な愛好家ばかりが増えるのは空寒い話である。もちろん、中にはクラブ・ジョーダンのような健全な大人の愉しみを満喫する人々もいるのだが、多数派ではないようだ。
VRMユーザー各位においては、特に腕に覚えのある方はしおじ氏の作品を参考に、是非一度フリーランス的な作品に挑戦してみていただきたい。ストラクチャの選択・配置の妙やテクスチャの工夫、現実にはありえない車輌の取り合わせで異世界を表現できるVRMの自由度に改めて感じ入ることが出来るはずだ。また、鉄道模型は実在車輌のリアル再現こそが命、と「思い込んでいる(と敢えて言おう)」御仁は、ご自身の頑迷な思考をご再考願いたいところ。まずは、しおじ氏のレイアウトを拝見し、その自由な世界を存分に味わってくれたまえ。

フリーランスつながりの話題。啓明氏の近作、フリーランスNビネット「Jupiter」には大ウケ。ここにも鉄道模型の大人の愉しみを知る人がいる。
なお、拙者のBrunig Projectは、大人の愉しみと言うよりは、単に精密再現する技術力の欠如を「フリーランス」という言葉で誤魔化しているだけなので、切腹ッ!!
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