2005/4/21

VRMスクリーンショット加工の系譜(3/3)  誉め殺し
連載第3回(最終回)。

● 爛熟期

ここまで、VRMスクリーンショット加工の黎明期転換期についてまとめたが、それに事実上の市民権を与えた功績はfox氏を抜きには考えることはできないだろう。氏の加工スクリーンショットは、理屈抜きに格好良くてインパクトがある。誰しもそういうものには憧れ、自分も真似てみたくなるものだ。かくして、かつてはタブーであったり破天荒な遊びであったものが、今日においてはネットVRMユーザーの表現形態の一つとして確立した感がある。

ところで。現在のfox氏に代表されるVRMスクリーンショット加工については、過去のそれの単なる延長線上の事象としては片付けられない、また、単に人目を惹くための工夫としても片付けられない共通の基盤を見出すことが出来ると思う。意識的にせよ無意識的にせよ、今日のVRMスクリーンショット加工職人たちは「スクリーンショットに加筆している」と言うよりは、VRMビュワー単体では表現出来ないことを表現しようとしているという意味において、むしろ「VRMに新たな機能を追加している」と言った方がしっくりくる。
例えば、VRMビュワーは3Dグラフィックスとは言うものの、その映像は擬似的な平面投射像に過ぎない。したがって、どうしても奥行きのダイナミクスがない。また、その動作は精密に描かれた映像のコマ送りに過ぎないので、スクリーンショットとして抜き出した1コマからは動きのダイナミクスがまったく感じられなくなる。
fox氏の作例を見ると、上述の「奥行きのダイナミクス」「動きのダイナミクス」を止め絵で表現しようとあらゆる工夫を凝らしていることがよくわかる。特に氏の作例の特徴として、敢えてスクリーンショットを回転させて傾けている、というものがあるが、これについてはfox氏本人から以下のようなコメントを頂いた。
「鉄道風景」は眺める人や年代によって多彩に視点が変わるという事に気付いたんです。VRMでは、ぞれぞれの人が持っている「その多彩な視点」を容易に再現する事が出来るので、「私はこんな視点からの鉄道風景が好きです。」という気持ちで回転させた画像を作成しています。最近はじめた「背景のブレ」もそうなんですが、回転させる事により「列車の疾走感」を表現したいのもあります。当然の事ですが、列車は走っている時が一番カッコイイと思っていますから。

fox-hobby-garden/メイン掲示板のfox氏の書き込みより

この回答を頂いた折は「なるほど」と膝を打ったものである。確かに実物/模型を問わず、鉄道を眺める視点が地面に対して常に水平である方が不自然な話だ。現時点でもVRMビュワーは様々なカメラモードで我々を楽しませてくれるが、fox氏のいう「多彩な視点」にはまだ遠く及ぶまい。
スクリーンショットの加工は、決して簡単な作業ではない。場合によってはVRMレイアウト製作よりも面倒なこともあるだろう。敢えてそれをおこない公開するユーザーがいることは、そこにVRMの表現能力に対する新たなニーズが潜在していることを意味しているのではないか。このへんは開発元であるI.MAGiCにもマーケティングの一環としてそうした作例に注目していただきたいものだ。

なお、今回敢えて「爛熟」というややネガティブなイメージの語を当てはめてみたが、これは今まさにこの分野の様々な試行錯誤がおこなわれている、ということを表現したかったから。本稿では「VRMの表現能力への潜在ニーズ」という観点からスクリーンショット職人の意図を分析しているが、もちろん実際にはそれがすべてではなく、十人十色の思惑があることだろう。
VRMスクリーンショット加工に関しては、これから「収穫期」とも言うべき方向性の収斂とVRM本体へのフィードバックのステップがあるものと思われるが、拙者としてはそれに際してfox氏及びfox氏に学んだ多くのVRMユーザーが活躍することを念じて止まない。
0


teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ