2005/5/28 | 投稿者: ghost

啓明氏前回の拙者の論考に呼応して、ご自身の鉄道模型レイアウト設計過程について語ってくださった。
さらに言葉を継ぐのは「屋上に屋を架す」愚行なることは承知しているが、拙者の持論を補完してくださる重要な論点を含んでいることは見逃し難く、無粋を覚悟で言上致し候。

拙者がリアル鉄道模型レイアウト製作にVRMの活用を強くお奨めする最大の理由は、そうすることでより後悔のないレイアウト製作のエクスペリエンスを楽しめると信じるからだ。小さなNゲージとは言え、レイアウトは嵩張る代物、作ったものが気にいらないからといって、次から次へと新しいものを作れる類のものではない。ゆえに、人によっては最初で最後のチャンスかもしれないその瞬間を、より確実に満足が得られるべく活かすことが肝要である。
さて、拙者が強く共感したのが、そして多くの読者もまた共感されるであろう啓明氏の以下の文章。

問題は中央のぽっかりあいた空間―――ここには山を作ったりストラクチャを置いたりするのだろうが、レールが引いていないとなんとなく勿体ないような気がする。

カーブ曲率に限界がある以上、エンドレスループの内側にはかならずこうした空間が生じる。トラックプラン検討の初期には、誰しもがこの空間にもギッシリとレールを敷き詰めたいという思いに駆られるものだ。
かく申す拙者も、第三期レイアウトの設計にあたっては主線内部の扱いにいろいろなトラックプランを試作・検討したものだ。啓明氏も拙者も、この時点で8の字型の内側線に思い至っているのは興味深い。これについては、我々二人の考え方が似ている、というよりは、むしろ、小型鉄道模型レイアウトに挑戦する愛好家の間ではこういった着想が普遍的であることを示唆しているように思われる。
そう、ここまでは誰もが同じなのだ。そして、この時点でVRMという武器を持っているか否かが、鉄道模型レイアウト製作の命運を左右すると拙者は確信している。所以は如何。それは、ここで普遍的な着想から個性的な嗜好へ転じることが出来るか、はたまた普遍的な着想を自分の好みによるものと勘違いしてそのまま施工してしまうか、が、その後の満足度に大きく影響するからである。
さて、この点に関して啓明氏の検討過程を追跡しよう。
いささか非現実的な鉄道となってしまうが、VRMで作って実際に遊んでみるとこれがまた楽しいのだ。
  (中略)
VRMで飽きることなく遊べるということは現実世界でもそうであろう、と考え、これを採用した。

ここで拙者と啓明氏は袂を分かつのである。上に引用したように、啓明氏はVRMが描き出した8の字線に「VRMで作って実際に遊んでみるとこれがまた楽しい」との判断を下している。一方、拙者はまったく同じ過程を経た上で「ビュワーで見てみるとちょっとゴチャゴチャし過ぎ」との判断を下した。
賢明な読者には注釈無用と思われるが、言うまでもなく拙者が言いたいのはどちらかの判断が正しくどちらかが間違っている、といった、短絡的な話ではない。万が一、そのようなことを貴殿が考えておいでだとしたら、そのヌルい思考に猛省を促すものである。
ここで注目すべきなのは、VRMビュワーが描き出して見せる普遍的な着想に対し、それぞれの施工者が自身の感性に基づいて判断をしている、という点である。啓明氏の個性は「運転の多彩さ」を、拙者の個性は「よりスイス的な風景」を目指して判断を下した。このことには上下貴賎はないのだ。
しかし、仮にここで我々にVRMがなかったとしたらどうだろうか。啓明氏は幸運にも普遍的な着想がそのまま(もちろんここから更に磨きをかけられたことは疑いないが)個性が下す判断と合致したのかも知れない。が、拙者がもしあの時点でVRMという武器を手にしていなかったら、実際に施工して途中で「ゴチャゴチャし過ぎ」に気づき後悔していたことはほぼ間違いない。

このことから拙者は以下の2つのことを思う。
第一に、人それぞれ出来上がる姿形は異なれども、鉄道模型レイアウト作りには多くの鉄道模型愛好家が共有する普遍的な何かが存在する。浅学非才な拙者は、まだそれを明確に示すことは出来ないが、それでも何かがあることだけは確かだ。
第二に、普遍的な何かがある一方で、人はそれぞれ自身の個性に合ったレイアウト作りを成し遂げてこそ満足が出来るものだ。そして、そのためにこそVRMは強力な武器になる。曖昧な普遍的なイメージに引きずられ慎重な検討を怠ったレイアウト作りは早晩破綻するか、完遂されても後悔を残すだろう。
未だ着手せざる目に見えない自身の個性を反映したレイアウトに仮の形を与え、普遍的な何かと自分の個性との相違を明らかに示すことこそが、鉄道模型レイアウト製作支援ツールとしてのVRMの最大の利点である。啓明氏の手記と自身の経験との対比から、よりその確信を強めた電波ゆんゆんな拙者にて御座候。
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