2006/12/3

春爛漫/漆黒4氏  霊魂補完計画

以下はI.MAGiCレイアウトコンテスト2006参加作品のレビューです。作品は結果発表のページからダウンロード可能です。

パッと見ではわからないと思うが、かつてないタイプのVRMレイアウトなのである。と言うのも、驚くべきことにこのレイアウトには高度0mmのレールがひとつもないのである。

VRM3以前、レールの高さは橋脚部品のみで決定し得る、という制約に慣れ親しんだユーザーにとっては、高度0mmを基準系としてレイアウトを作成することは言わずもがなの定石であったワケだが、本作はその定石に沿っていないという点で実に新奇なスタイルのレイアウトなのだ。そして、それは単に数値がそうだと言うだけでなく、ビュワー上での印象にも大きく現れている。

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前述したように、VRMユーザーの多くは高度0mm基準系の常識に縛られているため、大抵は、基準面にレールを置く→基準面に対して地形を積む/掘る、という作業でレイアウトを作っていくものと思うのだが、漆黒4氏の上掲スクリーンショットは、この発想からは生まれてこないであろう構成になっている。見た目のリアリティはさておき、決して平坦ではありえない元来の地形を切り通したり架橋したりして鉄路を設ける、という意味においては、まさにリアリティのある構成だ。

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ボクにとって最も印象深かったのが上掲の光景。Tatsuo氏fox氏など、必ずしも現実の鉄道の構造や、鉄道模型の定石に拘らない構成を多用するVRMユーザーは少なからずいるが、それでもこの構造は、ちょっと思いつかない作りではないか。それでいて破天荒というワケでもなく、ちゃんと鉄道風景になっているところが面白い。

ある意味において、作者本人にその意識があるか否かはともかく、これは“SF”的な作品と言えるかも知れない。我々が普段疑おうともしない「鉄道はかくあるべし」「鉄道模型はかくあるもの」という観念を一旦横へ置き、もしも、このように起伏に富んだ地形があり、かつ鉄路を切り拓く経済性があり、物理構造上の制約が解決された未来世界において、法規制のないままに鉄道が建設されたらこうなった、のような“センス・オブ・ワンダー”がある。

SF的な手法という点では、ネットVRM界隈の歴史上、外すことの出来ない名作として啓明氏の「Jupiter」やしおじ氏の「昔の城下町」があるが、これらの作品が基本的に現実世界との隔絶をもって成り立っているのに対し、本作は現実世界との接点を残しつつ、それでもなお、現実ではあり得ない光景を一定のクオリティを保って構成している。

この点において、本作は、いささか語感と作品イメージがそぐわないのではあるが、VRMにおける“サイバーパンク”と呼んでも良いのではないだろうか。というワケで、漆黒4氏はVRMユーザー界隈のダークホースとして、今後も要注目なのである。
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