2012/3/21

『灼熱の魂』  映画

「子供を産むことのメリットって何?」バカ娘が最近よく私に訊いてくる。
「痛いし、スタイル崩れるし、お金かかるし。 何一ついいことないやん?」
もしかしたら、とってもかわいいコに育つかも。
もしかしたら、とっても親孝行なコに育つかも。
「リスクが大きすぎる。そうならない可能性の方が高い。」
と、納得しない娘に渾身の一撃。
もしかしたら、親のできなかった理想を実現してくれるかも。

カナダ・ケベック。
長年公証人の秘書を勤めていた変わり者のナワル(ルブナ・アザバル)が
双子の娘ジャンヌ(メリッサ・デモルゾー=ブーラン)と
息子シモン(マクシム・ゴーデッド)に遺言を残した。
大学の数学科で助手をするジャンヌには「父を捜し手紙を渡すように」。
シモンには「兄を捜し手紙を渡すように」。
約束の果たせない人間は埋葬される資格がないから、
代わりに二人に約束を果たしてほしいのだとも。
ジャンヌは母の故郷の中東に向かい、そこで彼女の過酷な半生を知る。


母親によく似たジャンヌがアラブの乾燥した大地を行くと、
いつの時代の出来事なのか一瞬判別できなくなる。
彼女が目指した国の名は、はっきりと述べられていないが、
難民流入の時期、内戦の年代(1974〜5年)、外国軍の駐留、
ムスリムとクリスチャンの比率などからレバノンと考えられる。
と、なけなしの推理力を働かせなくても原作者・ワジディ・ムアワッドは
レバノン出身・ケベック在住なんだから明らかだったわ。

宗教と政治がややこしく絡み合った紛争の時代、
ナワルは難民の男性の子供を身ごもったことで部族を追われる。
その子供は孤児院に引き取られ、彼女は町に出て大学に。
約束とは、生まれた男の子を「必ず連れ戻す」ことと
祖母とした「大学で知識を身に着ける」こと。
ところが大学在学中に内戦が始まり、彼女は巻き込まれるどころか、
自ら闘士としてその身を捧げ、一派から一目置かれる人物となっていく。
ほんっとに一神教の信者たちはやることが過激だ。
あっちもこっちも戦争だらけではないか。
日本が宗教に関していい加減で大雑把な国でよかったよ。

二人が父と兄を捜す過程で。
ジャンヌは口論の多かったシモン(ある意味兄)と心を通わすことができるように。
ナワルの上司だったノタリ(レミ・ジラール)は法律を何より尊重し、
部下を信頼し、その子供たちに無条件に庇護を与える理想の父親像。
ナワルの手紙の中にある「共にあることが大切」を読むと、
本物の父・兄よりも彼らのことを見つける旅ではなかったのかとも思える。

後からレバノンにやって来て真実をしったシモンが
「1+1=1になりえるのか?」とジャンヌに問う。
数学では在りえない命題が人間社会に存在する悲劇。
「共にあること」が復讐の連鎖を断ち切る方法。
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