
今日(6月18日)の予算決算特別委員会では、市の緊急経済対策第3弾総額約10億円の補正予算について審議しました。特にプレミアム商品券事業の実施(予算9億600万円。プレミアム率100%(商品券1万円分を5千円で販売)の『プレミアム付き商品券』総額17億4千万円)を発行・ 1人につき2セット(額面2万円)まで購入可とする内容)と、市民等の市内宿泊施設利用促進事業の実施(予算5,000万円。 市内宿泊施設が提供する宿泊プランなどを利用する市民等に対して、その料金を助成する事として 1人につき5千円:宿泊プラン、2千円:日帰りプランを助成する内容)について、その実行体制等につき質問が集中したところです。
商品券事業については市内に本店が所在する企業のみを対象とする本店条項についての是非。宿泊施設利用助成にていては助成対象事業者の絞り込みと、対象にならない事業者への配慮等につき議員からの発言が続きました。
こうした背景には3月に改正した「産業振興条例」の解釈の問題があります。この条例の目的には第1条で「この条例は、高山市の産業の振興に関する基本理念、計画の策定及び役割の分担を定めることにより、産業の振興に関する施策を総合的に推進し、市内経済の好循環を図るとともに、歴史、伝統、文化、技術などを継承し、もって市内経済の活性化及び市民生活の向上に寄与することを目的とする」とし、第2条では「⑵ 産業振興団体 商工観光関連団体、農林畜産業関連団体その他市内の経済活動に関わる団体をいう」と産業振興団体を規定しています。又「⑻ 域外資本企業 事業者であって、市外に本社を有するものをいう」とも規定しています。
また基本理念としては「第3条 産業の振興は、事業者自らの創意工夫及び自助努力を尊重しながら、豊かで特色ある地域資源の活用により域外市場産業の成長を促し、市内産業間や企業間のつながりを強化することにより、市内経済への波及と資金
循環を促進し、市内経済の好循環の実現を目指すことを、事業者、産業振興団体、金融機関、大学等、市民及び市が共通認識し、連携のもと推進することを基本とする」としてそれに基づいた産業振興計画を策定するとしています。また第5条では「2 市は、基本理念に基づいた事業者の取組に対し、積極的な支援を行い、良好な環境づくりに取り組むものとする。3 市は、事業者、産業振興団体、金融機関、大学等、市民、国及び県との連携を図り、相互に情報交換及び協力が可能な体制を構築するも
のとする。4 市は、中小企業者等の実態を把握し、中小企業者等の振興に関する施策を効果的かつ効率的に実施するものとする」と定めています。又事業者の役割としては「第6条 事業者は、基本理念に基づき、常に自助努力及び経営革新に努めるとともに、地域住民との協調、市民の良好な生活環境の保全、地域資源の活用、市内産業とのつながりの強化、地球環境への負荷の低減並びに市民の消費生活の安定及び安全確保に取り組むものとする。2 (略)3 域外資本企業は、地域社会を構成する一員
としての社会的責任を自覚し、事業活動を行うにあたっては、市内において生産される商品の購入及び提供されるサービスの利用、市内における雇用の確保、景観への配慮に積極的に取り組むなど、市内経済の好循環が図られるよう努めるものとする」と改正しました。
先ずは商品券発行の問題です。「域外資本企業」として、事業者であって「市外に本社を有するものをいう」と定義づけた中で、第6条で「域外資本企業は、地域社会を構成する一員としての社会的責任を自覚し、事業活動を行うにあたっては、市内において生産される商品の購入及び提供されるサービスの利用、市内における雇用の確保、景観への配慮に積極的に取り組むなど、市内経済の好循環が図られるよう努めるものとする」とその責任と地域経済への貢献を求めています。その上で今回の商品券の発行については、本店条項により域外企業の適用排除を謳う事に矛盾はないのかとの指摘だったと思います。今回は薄く広く地域経済の消費喚起を促す目的の発行であり、購入限度額2万円分となれば高額商品の購入に向かうというよりは、生活必需品や食料品等の消費に向かう事は容易にうかがえるところであり、わざわざ本店条項を付けての制限は必要なのかというところです。ワンセット10枚の中で郊外大型スーパーでの使用は2枚程度に抑えるとの方針が示されたが、そうした事に力点を置いた発行に努めた方が良いのではと指摘されたとものと思います。通常の景気対策とは異なり非常事態での消費喚起であり、その点では消費者の利便性とも合わせて一考を要するところです。
もう一点「市民等の市内宿泊施設利用促進事業」についてです。これは
事業主体が「高山市旅館ホテル連絡協議会」という事であり、そうした団体に所属されない方からの問い合わせが続出しています。行政としては今回の緊急経済対策に関する産業振興団体との協議の中から、そうした事業についての要望があったことから事業実施に踏み切ったという説明であり、産業振興条例の趣旨からいっても今回の経済対策として反対するものではなく、少しでも事業者の団体としての取り組みには後押しをしたいと思っています。しかし事業者の中にはそうした組織に所属されない方、加入に際しての加入金や年会費のハードルが高く加入されていない方も多いと聞きます。近年の趨勢から簡易宿泊施設や民泊等の宿泊形態も広まっており、そうした方からの問い合わせが各議員のもとへも届いており、複数の議員の質疑もそこに集中していました。一般質問でも指摘されたことですが、今回は通常の景気対策としてではなく、地域経済の再生という意味合いも強く、日銭が稼げない窮状は誰もが強く感じているところであり、市が発表する事業計画では産業振興団体ばかりでなく、個別の事業者の声を救い上げてくれないのかという不満が問合せとなって噴出したと認識しています。今回そうした団体の声を聞き対応することは是とするが、行政としては「市は、中小企業者等の実態を把握し、中小企業者等の振興に関する施策を効果的かつ効率的に実施するものとする」と条例に規定している以上、そうした声を受け止める対応は取るべきだと考えます。これだけ質問が集中する中では「今回は産業振興団体からの要望に応える形での施策の展開ではあるが、組織に所属されないかたの声にも耳を傾けていきたい」と答えていくぐらいの分別があっても良かったのではないかと思っています。両事業とも事業主体は民間の組織であり、その団体へ補助することが行政の仕事であり、何も行政がやってやるんだと力まなくても良いのだし、自分たちの立ち位置というものもわきまえながら事業の説明に努力することだと考えます。私としてはそんな点を指摘しておきました。今回の補正予算案については質疑終了後に「議員間討議」を実施し、今後の行政執行に対して産業振興条例に配慮した対応にも留意することを指摘して可決しました。緊急性を重視するなかにも幅広く対応できる行政の総合力の発揮が求められます。

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