今年も市民税で推計した地域所得の推移を見て頂きます。又地域活性化策が地域所得の向上に寄与した自治体との比較を見ていただきました。
市民税収(所得割・法人税割)から類推した地域所得の推移をデータ化して、H17年比で指数として分析した結果をもとに、「地域所得の動向と観光消費額の推移並びにその経済波及効果について昨年9月議会において一般質問で見解を質しました。
市民税収を基に類推する意味は、その速報性にあり県の県民経済計算を待っていては把握するのに3年かかり、タイムラグがありすぎるという点です。あくまでもその方向性を指数化して一定の傾向を見るのが主眼です。その為H28年度決算数値を入れて今年もその傾向を見てみます。
市民所得を市民税動向で推計する方法。
1.当該年度の市民税収(所得割・法人税割)を集計し、その年度の
全国市民税総額で除して全国比率を求めます。
ex)H18年度高山市民税収は4,264,777千円、その全国比率は
0.0542です。
2.次に発表された国民所得にこの比率をかけ、当該地域の推定
地域所得を求めます。その際市民税は前年度所得に対して付
加されますので、次年度の市町村民税の全国比率をかけ推計
します。
ex)H17高山市民所得は387,355.7×0.0543=210.3となります。
次のグラフに示すとおりです。
ただし、H28は次年度未確定の為同年度の全国比で案分し推計しています。
最初のグラフでは国民所得、県民所得、市民所得の動向を指数化して表すとともに、高山市の観光客入込数についても指数化して載せております。観光客の入込数の伸びは市民所得の動向に反映されているのかと質したのが昨年9月ですが、その乖離幅は広がっています。
平成29年度高山市観光統計では、初めて観光客数の伸びと観光消費及びその経済波及効果については連動せず、頭打ちであることをコメントしました。
2番目のグラフでは、地域活性化施策が地域所得の向上に寄与した自治体との関連で高山市の動向を比較しています。ニセコ町の228%は別としても、紫波町、大衡村についてもH17年比で130%前後の数値を挙げている事です。この3自治体はそれぞれの活性化策が地域の稼ぐ力を押し上げていると言っても過言ではありません。高山市はどの数値を見てもH17年度の数値を越えられない状況です。観光客入込数だけを金科玉条のごとく産業経済政策の柱にするばかりでは、こうした数値を上げられないことだけは確かです。
これでは合併後の10年間とそれに続く3年間何をやっていたのかと言われても仕方ありません。
次に、観光客入込数と観光消費額の推移を見てみます。
H29年観光客入込客数は642万3千人、観光消費額は940億円というところですが、それぞれ合併のH17年以降はグラフにに示した様に推移しています。H828の観光消費額1000億円のカウントはおかしいのではと指摘した数値もあります。
実際にH28年観光統計では、観光消費額100,008,349千円(約1,000億円)、その経済波及効果
221,018,452千円(約2,210億円)と発表されたのですが、どこにそんな金額が回っているのだという素朴な疑問から地域所得の動向を推論し、観光消費額や所謂観光統計の在り方に疑問を投げかけたのが昨年の9月議会での一般質問でした。
H29の観光統計では、宿泊客一人当たりの消費単価は前年比3.84%減の34,382円、日帰り客一人当たりのの消費単価は前年比20.04%減と報告されたところです。可処分所得の減少や節約志向の浸透で消費が停滞気味であることがはっきり表れています。(それにしても宿泊料金で客単価平均約5000円アップと報告したH28年度観光統計は少し疑ってかかる数字でした。)
どっちかというと原課が胸を張って答弁できるような内容ではないはずです。観光政策の統計数値はあたかも打ち出の小槌のうような性格を持ち、その発表は過度な期待を市民に与えてしまう基となってきました。数的成果にのみこだわる姿勢は短期間での成果主義に陥りやすく、そのくり返しが政策の停滞要因ともなるばかりです。
まちづくりや観光政策においてもプロセスの重要性が強調されています。そこでは「プロセスデザイン」という言葉が使われています。高山市においても少し転機にある経済政策、産業政策の見直しが要求されていると思います。

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