
2月15日の総務環境委員会に於いて、次年度からの行政組織の見直しについて報告された。
目的は「市政を取り巻く環境の変化等に伴う行政課題への対応や効果的・効率的な行政運営を推進していくため、行政組織の見直しを行う。」という事のようです。骨子としては2つあり、それぞれ次の様に報告されました。
1.推進体制の強化
@市政の方針及び重要施策等の推進について市長及び副市長
を補佐するとともに、各部局を総括し、各分野における政
策・施策の立案に関して指導助言並びにその実施を指揮監
督する理事職を設置し、行政運営の推進体制を強化する。
A各支所が連携して、今後の支所の在り方をはじめ、支所機
能・支所長権限について検討するとともに、支所地域にお
ける課題解決に向けた協議、情報共有を行う体制をさらに
強化するため、支所長を総括する総括支所長を設置する。
2.森林及び林業施策の推進
@地球温暖化防止や災害防止・国土保全。水源涵養など森林
が持つ多面的な機能の重要性が増す中、長期的な視点に立
った適切な森林の整備・保全を積極的に行っていくため、
森林及び林業施策を総合的に推進する組織を設置する。
3.実施時期 平成31年4月1日
今回の報告の問題点。
1.の「推進体制の強化」ですが、そもそも論として、今なぜこうした見直しをしなばければならないのかという問題、所謂「政策の発生減」という事です。
まづ「理事」ポストの新設ですが、一読してお分かりと思うのですが、理事の職責とされる内容は、本来副市長の職務分掌と言えます。一般職のままでの位置づけとするのが今回の内容です。
補佐して総括するのは一般職を越えた特別職が果たす役割です。上司の命令に従って職務を遂行する一般職との違いはそこにあると言えます。なぜ今まで副市長の定員一人にこだわってきた市長が、議会からの提案「副市長の二人体制」ではなく、市長・副市長の下に条例上の権限を伴わない理事職を付けたのかという事です。
しかも、昨年庁内の企画調整機能を強化するという目的で、それまでの企画・財政という体制を、企画、総務、財政の三部体制とし、それぞれに部長職を置いた意味から考えると、それでも今の行政組織では対応していけない、組織としての脆弱性が表れているという事になります。あくまで行政のトップは市長であり、その権限と責任の上に立って行政の責任を果たすことになっています。それを補佐するのが副市長です。多忙すぎてお二人では面倒見切れないと言うなら、権限を分けてその執行に当たるのが筋ではないのかと思います。そうした足元の見直しには触れず、組織図の上だけでポストの新設をするという事は、市長・副市長の内部統制の限界を自ら露呈するという事ではないのかと考えてしまいます。
条例なり規則で理事職の職務分掌等の規定をしっかり定めることが必要です。そうでなければ新ポストに就く「理事」の責任だけが増え、仕事上の成果を求められるばかりで権限はなしという事につながる危惧があります。そうした点を質されると、これからどう位置付けていくのか考えていくとの答弁です。いつものやり方です。行政運営に関する先を見据えたリスク管理ができていない。そう感じます。 説明を聞いた委員の皆さんの腹に、すとんと落ちることのない腑に落ちない説明というところでした。
副市長は市長を補佐するとされているが、理事は市長も副市長も補佐し、その上で各部局を総括、各分野における政策・施策の立案に際して指導助言をして、その上でその実施を指揮監督するとなれば、責任だけは副市長以上です。しかし権限は与えられていないポストとなればやるせないところです。
もう一点「総括支所長」の問題があります。何をするのかというと「今後の支所の在り方を始め、支所機能・支所長権限について検討し、支所地域における課題解決に向けた協議、情報共有を行う体制強化」だとあります。これについても今さらという感が否めません。このことについても支所に関することは企画・総務が中心となってその調整に当たってきたのでは無かったのか。それと合併以後13年が経過して支所地域の課題がなんであるかという事はもうあぶりだされているのであって、今さら情報共有などという段階ではないと考えます。今後どうするかの具体論で支所地域の地域振興を考えるには、本来の企画総務部門がその調整力を発揮して解決に向かう時期と言えます。これも組織図だけで考える課題解決の幻想ではないのか。支所地域の格差是正に関しては、議会からも様々な提案がある中では何を今さらという感が強いと言えます。
先日の委員会では、これらの問題に関して「議員間討議」の時間を設け、この報告に関する問題点や論点を掘り下げました。委員会としては「条例や規則への位置づけを明確にし、理事職の職務分掌と権限について明確にすること」、「その前提として、これまでの組織と事務運営上の見直し・反省点を明確にし、その上に立っての組織改正とされたい」という指摘をさせていただいたところです。
「自治法に位置付ける内部組織の編成」
地方自治法158条には次のような規定があります。
第158条第1項
普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、必要な内部組織を設けることができる。この場合において、当該普通地方公共団体の長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌する事務については、条例で定めるものとする。
第2項
普通地方公共団体の長は、前項の内部組織の編成に当たつては、当該普通地方公共団体の事務及び事業の運営が簡素かつ効率的なものとなるよう十分配慮しなければならない。
第1項は「長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌する任務を条例事項とし、条例の規定対象は、長の権限に属する事務分掌についての内部組織であるから条例の発案権は長に属する。
議会による修正は、2項が規定する配慮がなされているか否かなど、適法性・違法性の観点からの審査による修正は可能であるが、長の組織編成権を侵害するような「修正は出来ないと解されている」と解説されています。しかし、
「直近下位」より下位にある組織については、長がこれを定めることになるが、その形式については、@内部組織の設定と任務に関する定めは、地方公共団体の全体に関わる事であり、A住民に対する一覧性、概観性の確保も必要であるから
規則によることが望ましい。と解説されています。
又、第2項の規定は「長は編成にあたり事務及び事業の運営が簡素かつ効率的なものとなる様十分配慮しなければならない」と規定したものです。
先にも述べたように理事の職務分掌などについては、法の趣旨に則りしっかりと規則で定めることが必要と言えます。ただ第2項にある様に(長は編成にあたり事務及び事業の運営が簡素かつ効率的なものとなる様十分配慮しなければならない)という点では、屋下に屋を重ねるような形の理事ポストの導入にはそのような配慮があるのかどうか疑問です。
今回の行政組織の見直しでは、理事職の副市長との役割り分担、企画部門との棲み分け、政策調整などで詰めの作業が必要と見ています。行革の観点から見て、新年度では職員体制はどうなるのか。支え手となる管理職や主管級の人材は足りているのか等、検証していかねばならない点も多々あります。3月議会で予算も含めその点を質していくことになります。

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