一週間にわたる<映画>と<列車>の旅もいよいよ終点にちかづく。
日本は国土が狭いせいか、<列車>をめぐる映画は少ない。
SLは、ノスタルジーの象徴(
『父ちゃんのポーが聞える』を学校の集団鑑賞で観た記憶がある。)であっても、
権力の象徴とはいえない。
むしろ高度経済成長時の
<新幹線>がまさにそれだ。
増村保造
『動脈列島』佐藤純彌
『新幹線大爆破』と、権威と戦う男たちもいたが、
ジャンルとして邦画に列車が登場しなかったのは、
庶民の交通手段という
公共性のため、鉄道会社側が映画の
撮影に協力しなかったことが大きな理由だ。
よってこのジャンルのパイオニアは、
『痴漢電車』 シリーズのピンク映画のパルチザンたち。
忘れ物市の片隅の不用備品販売で鉄ちゃんと争って購入した
つり革を、セットに持ち込みリアリティーを追求し、奇蹟のごとき
SPEEDの
ゲリラ撮影(当然無許可!)で実際に走行する列車の中でカラミを撮る。
75年の山本晋也を第1作として、
果たして何本存在するのか?誰も知らない(寅さんよりは遥かに多い)このシリーズは、正しく日本の
<リュミエールの子供たち>である。
ところで、日本を代表する映画監督
黒澤明の<列車もの>というと、
『天国と地獄』の身代金を<こだま>の窓から投げるシーンが有名。
(この場面も滝田洋二郎が
『痴漢電車 聖子のお尻』でまるごと
再現してる。
『踊る大捜査線THE MOVIE』どころじゃないぜ。黒澤とPINKの関連でいうと
『羅生門』製作の
本木荘二郎は、晩年
岸本恵一ネームでピンク映画を撮っていた。)
しかし、黒澤明には
完成しなかった列車映画がある。
ということで、最後を飾るのは黒澤原案の
『暴走機関車』 。
製作は、ゴーラン&グローバスのCANNONフィルムズ、当時とち狂って
『ゴダールのリア王』(黒沢の
『乱』と同じ原作だったからという説あり。)なんて映画まで作っていたユダヤの
角川映画。
この映画を何故黒澤が撮れなかったのか?そしてどういう経緯でこの映画が撮られたか?は、あえて書かない。(有名だから他のネットで検索して下さい。)
しかしモシこの作品が当時、黒澤明の意図した通りの
70_オールカラーのハリウッド映画として完成していたら、世界の
映画史は間違いなく変わっていただろう。(
『トラ・トラ・トラ!』をめぐる不幸な事件もありえない。)
この映画は、
暴走しつづける列車の上で
仁王立ちするジョン・ボイト(
『真夜中のカーボーイ』)の姿で終る。
それは、ハリウッドに対する黒澤の
絶望と怒りと
『夢』の象徴か?
永遠に走りつづける<列車>のように、
<映画>も走る(創る)ことをやめることはしない。
オークションしたいひとは、こちらを見てね。
黒沢明、
『椿三十郎』の三船の十人斬りがコマ撮りで載っている
『大殺陣 日本映画80周年記念号チャンバラ映画特集』もあるよ。

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