『暗くなるまで待てない!』も今日で最終回。
主人公たちが「これ以上いい映画はあるもんか。」と撮るのは
吸血鬼映画。
「時間ですよ」の藤竜也風チンピラの風間さん(この人もセリフはくさいがイイ味)演じるこの吸血鬼は昼間から出てくる。
なぜかというと、あせっていて
暗くなるまで待てないからだ。
(ヘップバーンが
盲目のヒロインの映画ではない。)
ロジェ・バディムの
『血とバラ』が吸血鬼映画の最高傑作だと佐倉先輩の口から語られる。
ここでまたひとつの映画を思い出す。
1967年、
自主映画のさきがけとなったあの映画。
当時CFを撮っていた大林宣彦監督の
『EMOTION 伝説の午後 いつか見たドラキュラ』だ。
先のバディムへのオマージュ含め、西部劇(「暗く〜」では
『荒野の用心棒』の鉄板のとこ)のパロディなど
この映画を大森監督が意識したのは間違いない。
「さよならドラキュラ、さよなら青春。」と唱われるラストは
萩本(村上知彦 現・マンガ評論家 さりげない演技でいい。)が
シンシア似の恋人に云う
「もう子供の時間は終わりや。」と同じ意味だ。
で、今日は大林監督の
『金田一耕助の冒険』 。
同じ金田一でも、国語辞典の金田一京助と壇ふみに間違われるところからはじまる
この<横溝正史>&<角川映画>の
セルフパロディこそが、もっとも
アマチュア時代の大林作品に近い。
古谷一行扮する(TVシリーズでも演じた)金田一は、ラスト近くで映画の終わりかたに
反抗する。
もっとおどろおどろしいものをと自ら殺人を犯し、等々力警部(田中邦衛)が金田一を
撃つところで映画は終わる。
さよなら金田一耕助、そのセンチメンタリズムは「〜ドラキュラ」と全く同じだ。
松田優作の
『蘇る金狼』(蛇足だが本作で、後の妻、熊谷美由紀がデビュー)との2本立だから、こんな趣味的な世界ができたのかも。
「暗くなるまで待てない!」は、CGになれた今の映画学科に通う学生たちにとっては、
技術的にはツタナイ作品だ。
高橋聰(現・映画評論家
『ポンコツのバラード』って8ミリもあった。)が担当するカメラは手ぶれはするが、その性急なカメラワークには今の映画にはない
映画というものに対する憧憬が存在する。
かつて大森監督はじめ若きキャスト&スタッフたち(ぴあフィルムフェスティバルのプロデューサー西村隆もいる。)が観ていた
ヌーベルヴァーグ、アメリカンニューシネマ、日活アクション、ブルース・リーのカンフー映画(竹中直人含め、誰でも1回は
貧弱な上半身裸でヌンチャクを振りたくなる。)や
その他モロモロの映画対する
オマージュ。
映画の主人公たちは、その時代を生きていた
自分たち自身だ。
そして彼らは、他ならぬ
観客たち自身(筆者ら8ミリ青年含む)でもある。
それゆえ30年たっても、この映画は
唯一のオリジナルとして永遠に心に焼きつく。
モラトリアムの終焉は、いつも美しくそして哀しい。
大森監督自身は「暗く〜」の3年後すでにオトシマエをつけてプロの道を行く。
その映画を(稲田)
『夏子に長いお別れ<ロング・グッドバイ>』と云う。
本作のオークションは終了しました。
大林監督の
『時をかける少女』のビデオはこちらを見てね。

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