映画『
アンタッチャブル』
(1987年,米国)が先月深夜にTVOAされていたので久し振りに観ました。
(ノーカット版ではありませんでした。)
1930年代、
禁酒法時代の
シカゴが舞台。

酒の密輸や密造で力をつけたマフィア、
アル・カポネとそれを取り締まる
エリオット・ネス率いる“
アンタッチャブル”との抗争を描いた映画。
ベタ過ぎるくらいに典型的な
ポリスアクションギャング映画で、単純に面白いです。

娯楽作品用にかなり脚色されているそうですが、事実を基にした物語で、アル・カポネやエリオット・ネスは実在した人物だそうです。物語に事実ゆえの凄みを感じます。
しかしこの映画が特徴的なのは、単に面白いだけでなく、様々な示唆に富んだ作品であることだと思います。
以下、個人的に感じた2,3の“示唆”について触れてみたいと思います。
(以下ネタバレあり、注意

)
まず
禁酒法について。

カポネは禁酒法のお陰で潤い、禁酒法でマフィアが力をつけた街では、その禁酒法によってかえって治安が悪くなる。 …というのは歴史的な事実だったようです。
この映画では『禁酒法』ですが、禁酒法に限らず
庶民の実情とは乖離した抑圧的な法律が、社会にとって如何に害悪であるのか? が描かれているのだと思います。

庶民・市民の生活を法で安易に抑圧しようとすれば、かえって裏社会や闇経済を発展させて治安を悪くしてしまう、と言うことを示唆しているのだと思います。
この映画はこの一点だけでも、観る価値が充分にあるかと思います。
次に
陪審員制度について。

被告人席のカポネが
陪審員達に買収を仕掛けるシーンがあります。(実際には“
脅迫買収”であります。)
今の日本の
裁判員制度においては、被告による
裁判員に対する“脅迫買収”に対して、実際にはどの程度の防御があるのでしょうか?
公開当時(1987年
,昭和62年)には全く気にならなかった箇所ですが、裁判員制度が始まっている今日の日本では、その点については今後は気にかける必要があるかと感じます。
…日本の場合はカポネのような組織暴力による脅迫買収よりも、行政犯罪における行政当局からの脅迫買収の方がありそうですが…。
次に
アクションシーンについて。
乳母車が転がり落ちる大階段の銃撃戦はこの映画での最大の見せ場かと思いますが、このシーンは映画『
戦艦ポチョムキン』抜きでは語れないと思います。
『戦艦ポチョムキン』での大階段を転がり落ちる乳母車の赤子の生死についてはここでは触れませんが、この映画『アンタッチャブル』では作り手側は乳母車の赤ん坊を救いたかったのではないでしょうか。

このシーンでわざわざ水兵を巻き添えにさせている描写は、良い意味で芸が細かいと思います。
他にも銃撃戦で騎兵突撃を敢行するシーンがありますが、昔の西部劇を感じさせるものがあり味があると思います。
次にカポネの
火力について。
近代戦においては「
戦力とは兵力ではなく火力」と一般には言われているようですが、ヲタ的にはカポネの火力についてはスルー出来ない所かと思います。
カポネの一味は拳銃の他にマシンガンやショットガン、手榴弾を揃えております。映画の中のフィクションではなく、事実としてそうだったようです。
そしてそれは、約10年後の太平洋戦争当時の帝国陸軍の歩兵部隊にも優る火力だったのではないでしょうか?
もし帝国陸軍の歩兵部隊とカポネの子分達が同じ兵力(例えば1個分隊どうし)で銃撃戦になったとしたら、
火力に劣る帝国陸軍はマフィア達を制圧できないのではないか?
敵国の約10年前のギャングにも劣る装備だったのではないか? と言う疑問や不安が個人的には拭えません。
38式小銃での銃剣突撃と
トンプソン・サブマシンガン(
トミーガン)では、
長篠の戦いにおける
武田軍の如くになりかねない気がするからです。
米国の国力には確かに驚嘆させられるものはありますが、それにしても
帝国陸軍の貧弱装備には当時の軍上層部の現場,
前線に対する無責任さを(少なくとも個人的には)感じてしまいます。
・・・他には、
映画の中では
ケビン・コスナーのスーツがパンフレットによると
アルマーニだそうですが、そんな所に良くも悪くも公開当時の“
80年代バブル”の時代を個人的には感じてしまいました。
最後に個人的な5段階評価を少し。
面白さ 5.0
ポリスアクションな洋画では個人的には最高傑作であります。


お薦め度 3.5
割りと血生臭いので、そーゆーのが苦手な人にはお薦めしにくいかも。


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