浅田次郎の小説『
終わらざる夏』を今年の正月に読んだ。
『
ガールズ&パンツァー』TV版

を最終話まで観終わったこの機会に、『終わらざる夏』についてもネタバレしない程度にごく個人的な感想を少し。
(西住大尉についても一行だけ触れてあったよ。)
終戦直後に
千島列島北端の
占守島で
ソ連軍の侵攻を迎え撃った帝國陸軍の戦車隊を題材にした長編小説。
昭和20年8月18日の
占守島の戦いを題材にした長編小説って、割りと珍しいかと思います。
長くて厚い内容なので、休み中に読みました。


主役メカはガソリンエンジン搭載の
九七式中戦車改?
チハたん好きな戦車スキーにはウハウハな作品かも。
軍ヲタ,歴ヲタ,戦車スキーの方々にはお薦め度が高いかと。
ただ、どちらかと言えば女性よりもおっさん向きで、ややエロいのでお子様にはちょっとNGかも?
内容的にはちょっと
ジュブナイル分が入っていて、
中年ジュブナイル小説? って感じもするかも。
重い題材を用いた小説ではありますが、単に重たいばかりではなく、娯楽作品としても充分に成立している小説だと思います。
アッツ島の玉砕により、米軍がアリューシャンづたいに北方から侵攻して来ることを想定して、占守島には陸軍精鋭の戦車隊が配備されます。しかし連合軍は南方から本土に迫りますが、北方からは遂に米軍が来ないままに終戦を迎えます。
しかしそこへ、
ポツダム宣言受諾後の日本に対して、
スターリンのソ連による千島列島への侵略が始まります。
当時のソ連には
T-34中戦車や
JS-2重戦車等の、旧日帝陸軍の戦車などでは全く太刀打ちの出来ないような、世界的にも優秀な戦車が大量にありましたが、ソ連軍はこれらの戦車をこの戦いには投入しておりません。
それらの重くて大きい戦車をカムチャッカまで運ぶ輸送力・海運力は、さすがに無かったのではないでしょうか。
この本を読む限りでは、占守島に上陸したソ連軍の兵士達は、
独裁者スターリンが
対日戦後補償のウワマエをカサ増しする為に捧げられた、言わば生贄部隊でもあったようにも思えました。
物語自体は
群像劇なので、色々な立場や地域の大勢の登場人物たちの、それぞれの心の内が細やかに描写されております。
物語の舞台も決して占守島ばかりではなくて、ソ連領内も含めて大変に広い範囲に散らばっており、戦時下の日本の内地の様子も詳しく描き出されております。
派手なドンパチも殆んどありません。むしろそれら大勢の登場人物たちの群像劇である所に、物語の力点が置かれているようにも感じました。
戦車スキーの人が派手なドンパチだけを期待して読むと、長くて挫折するかも?(主人公も戦車隊の隊員ではないし)。その点は要注意かも。^^;
以下はごくごく個人的な感想ですが、
ソ連の無い今の世界と世の中は、本当に素晴らしいと思います。
フルフチョフ時代をリアルで知らない身としてはあまり公平なことは言えないのかも知れませんが、
ゴルビー以前のソ連は本当に恐ろしい国でした。
○゛カウ×が決して健全保守ではないように、“アカナチ”の如きスターリン主義は決して共産主義ではないと思います。
そして現ロシアの“
再ソ連化”や“
ソ連回帰”の動きには、今でも厳しく警戒すべきと考えます。

わが国の隣人を「ソ連が無くても恐ロシヤ」と言う状況にさせては断じてならないと考えます。
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