映画『
生きてこそ』(1993年
平成5年,126分)をDVDで観た。
1972年
(昭和47年)、南米のアンデス山中に墜落した
ウルグアイ空軍機571便遭難事故から数十日後の、奇跡の生還を果たした生存者達の実話を元にしたサバイバル劇。
おいらの観たDVDには、映画本編の他に特典映像として、実際の生存者やその関係者の方々へのインタビューを交えた約50分のドキュメンタリー映像も収録されておりました。映画本編にも劣らず、圧巻の内容。
航空業界の方々には、恐らくは鉄板でお薦めなのかと。(と言うより、必須かも?)

他にも、
冬山登山をする方や
災害救助の関係者の方々にも、必須な映画なのかと。

宗派的には
カトリックの方 (おいら自身は信者ではありませんが) には特にお薦めなのではないかと?
食人,人肉食の描写があるので、お薦め度については、その辺りの所が人によってはやや要注意かと。


今年の正月休みにDVDで観た映画で今更ですが、折角なのでこの機会に以下、このDVD版のごく個人的な5段階評価&感想等を少しだけUP。
お薦め度
上記関係者の方々 6.0 以上
それ以外の方々 4.0〜5.0
面白さ 4.5 前後
冬山・雪山が舞台のサバイバル劇なので、娯楽映画として観るのなら、冬よりも夏の方がお薦めかと。
映画本編も娯楽映画として充分に面白いのですが、映画本編よりも特典のドキュメンタリー映像の方が、お薦め度は高いのかも。
以下、ややネタバレあり。注意、であります。
墜落遭難事故の生存者達が
サバイバルに成功した要因としては、
地縁的・宗教的・ラグビーチーム的な団結が元々固かったこと、
大学のラグビーチームで体力溢れる若者が多かったこと、
医学部の学生も多く含まれていたこと、
生き延びるために死んだ仲間の人肉を食べる決断をしたこと、
生存者の選抜隊が道無き雪山の下山に成功したこと、
…などか挙げられるかと思います。
その反面、不運だったのは、
頭上を飛ぶ捜索機に発見してもらえなかったこと、
事故機の捜索が早々に打ち切られてしまったこと、
サバイバル中に雪崩に遭遇したこと、
…などが挙げられるかと思います。
ナンドの逸話は示唆的だと思います。
ナンドは墜落の衝撃で昏睡状態に陥ります。母は即死、妹は遭難中に衰弱死して行きます。
しかしチームの仲間達は昏睡状態のナンドを見捨てませんでした。
2日後に意識を取り戻したナンドは、その数日後に妹を看取ります。
このナンドが雪山の下山に成功した1人です。
もし仲間達が昏睡状態のナンドを見捨てていたら、或いは全滅していた可能性だって有り得たか?とも思えます。

人命は見捨ててはいけないのだと思います。救い続けようとする姿勢が問われるのだと思います。
このナンドの逸話は大変に示唆的だと思います。
何処の国かを問わず、救える人命は救わないと、後々報いがありそうで怖いです。
映画では描かれていない生還後のことですが、遭難中に人肉食で飢えを凌いでいた事故の生還者達を、地元のカトリックの聖職者が宗教の立場から庇ったことは社会的な意味でも大きいと思います。

ともすれば教条主義に陥って袈裟の権威をもってして、生きる為に人肉食を余儀なくされた生存者の方々を糾弾しかねないケースでもあったかと思います。
この聖職者の方の場合は、困った人や弱者の立場に立てる“血の通った”聖職者だったのではないか?とも思えます。宗教・宗派の如何を問わず「宗教者は斯くあるべき」と考えます。
ましてや「自らをカトリックよりも優れている」と自負する,或いは自称する宗教・宗派(或いは思想)の僧侶や聖職者,党指導者などなら、尚更のことだと思います。
日本人に則して言えば、この一連のウルグアイ空軍機571便遭難事故の事例は、戦時中の前線の一部の日本軍兵士による食人行為,或いは共食いの事実の明かし方を検討する際の比較検討の材料にもなり得るか?とも考えます。
戦時中の日本兵の場合には、このアンデスのケースほどには宗教的・ラグビーチーム的な結束の固さはさすがに有り得ないかと思うので、この遭難事故のケースのように全てを明らかにすることは社会的にも困難さを伴なうのではないか?とも考えます。(この遭難事故のケースでも、具体的に誰の人肉を食べたのか?については、当事者たちは遺族感情を考慮して明かしてはいないようでもあります。)
「あの家の曾爺さんがそっちの家の曾爺さんを食った云々」と言う類の事実(或いは噂)が国内各地のあちこちで知られるようになってしまったら、このアンデスのケースとは違って、日本ではムラ社会が成立し得なくなるのではないか?と恐れるからです。
歴史的な事実は事実として全ては白日の下に明かされるべきかとは思いますが、それはこのアンデスのケースとは違って「今すぐに」ではないような気も、…個人的にはしてしまいます。
共食いの当事者と各々の家々の当主との間柄が少なくても5,6世代か6等親以上は離れた頃でないと、日本では国内各地でのムラ社会が保てないのではないか?と(ごく個人的にですが)思えてしまうからです。
・・・等々と、おいらの思いつく範囲だけでも、様々な角度からもお薦め度の高い映画かと。
この『生きてこそ』は、なかなかに隠れた名作だと思います。




・・・娯楽映画として観るのなら、夏にお薦め かも。



当ブログの過去の関連記事
130819 八甲田山 観た
130225 八甲田山-死の彷徨- 読んだ
120222 ハッピーフライト 観た

0