TVアニメ『
長門有希ちゃんの消失』第1話で
キョンが
北高文芸部の部室で読んでいたハヤカワ文庫のSF小説『
ヴァーチャル・ガール』を読んで見た。
『ヴァーチャル・ガール』については書店で見かけたらそのうちに買って読もうと考えておりましたが、その後『長門有希ちゃんの消失』のwebラジオ『北高文芸部ラジオ支部』内で『ヴァーチャル・ガール』は絶版になっているという情報を聞いたので、取り敢えず地元の図書館で借りました。
暫らく前に読了したので、この機会に感想等を備忘録的にUPしておきたいと思います。
以下、「
ネタバレあり、注意!」であります。
この本は人工知能を持つアンドロイド
マギー・ボールドウィンがアンドロイドであることを世間に隠しながら全米中を旅して心の成長を遂げる冒険物語でした。

そして1人の人間として、1個の確立された人格として社会の中で自立して行く物語でもあります。
AIの少女マギーとその冒険の旅が魅力的に描かれていると思います。
ハードとしてのアンドロイドの性能よりも、ソフトとしての人工知能の心の成長にこそ、より描写の重点が置かれていると感じます。
人口知能のAIを何処までも1人の人間として、1個の確立された人格として表現することへの強いこだわりを感じました。
人工知能のAIがアンドロイドの体で全米中を旅するSF小説でありますが、と同時に米国内の様々な社会問題、特にホームレスの問題については詳しく描かれております。
脇役ではマギーの親戚筋(?)にあたるAIの
チューリングが個人的には特に印象的でした。
ネットの中のヴァーチャルの世界にいた頃のチューリングは、他のAI仲間(
ミンスキーや
ラーマ)を束ね、マギーの良き相談相手であり守護天使のようようでもありました。

しかしある時マギーにわがままを言って、ブロンプトン・インダストリーズにあったアンドロイドボディを失敬して、現実世界に飛び出して来てしまいます。
ヴァーチャルの世界にいた頃のチューリングはマギーの良き相談相手であり守護天使のような頼もしい存在でもあったのに、現実世界に出て来た直後のチューリングはマギーを頼り切る弱い存在になってしまいます。
ヴァーチャルの世界にいた時には多弁だったのに、現実世界では寡黙な男に成長して行きます。味のあるキャラでした。
読んでいる時には、全米中をRPGで冒険の旅をしているような感覚が個人的にはありました。

主要な登場人物についてはおおよそハッピー・エンドを迎えて物語は終わります。

読後感としては、1つの長い旅を終えたような満足感・満腹感がありました。喩えて言うならRPGをクリアした感じ?いいお話でした。
物語はだいたい大団円という形で終わっておりますが、個人的には
アーノルド・ブロンプトン・ジュニアについては不安が残ります。
マギーを作ったアーノルドは、人口知能のAIとアンドロイドのボディを単身で作り上げる天才的な技量を持ち合わせてはおります。
とは言っても決して人の心の機微に敏感な訳ではなく、むしろAIや人の心に対して今一つ無神経な所があるようにも思えます。
何となく父親と同じような人生を辿るような予感もして、個人的にはアーノルドの将来に少し不安が残りました。
長い冒険物語なので、もしも映像化されるのなら映画よりもTVの帯ドラマの方が合うような気がします。映画の尺ではこの物語の長さは収まり切れないでしょう。

それでも無理に映画化したら、恐らくは中身をだいぶ端折られた内容になってしまうと思います。
アニメ版『
長門有希ちゃんの消失』第1話『
大切な場所』では、
キョンは高一の冬にこの『ヴァーチャル・ガール』を読んでおりますが、個人的には小中学生にはあまりお薦めはしません。




“赤線”とか“街娼”とかの単語が何度か登場し、それ系の描写も無くは無いので、決して子供向けの内容ではないと個人的には感じます。
また、長いお話なので繁忙期にはあまりお薦めできないかも。
以下は『
長門有希ちゃんの消失』との関連であります。
マギーはある事件によりアーノルドと生き別れて記憶を失ってしまいます。
マギーはチューリングの助けを借りながら自分の無意識下にあるもう1人の自分,
セキュリティ・プログラムと人格を融合させることで記憶を取り戻し、改めて自分の運命に立ち向かって行きます。
『長門有希ちゃんの消失』に即して言えば、
時空改変後の長門は本来の自分の使命や存在理由を忘れている状態です。

この本を敢えて冒頭話の画面の中に写したということは、いずれ何処かで本来の長門に戻ることも有り得ることを示唆しているのかも? とも思えました。
また、アンドロイドのマギーはアーノルドから離れて1人の人間として社会の中で自立して行きます。
それは『長門有希ちゃんの消失』に即して言えば、
生体アンドロイドの長門もまた製造主である
情報統合思念体から離れて独立し、1人の人間として1個の人格として、社会の中で自立して行く未来が示唆されているのではないでしょうか?
『ヴァーチャル・ガール』はアニメ版『長門有希ちゃんの消失』にハマった人で、『長門有希ちゃんの消失』をより濃ゆく味わいたい人にはお薦めかも。
絶版本らしいので、古書店を探す手間を省くのなら地元の図書館が狙い目かと。
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