「タリー・ホウ!」 ゾラックたんカワユス
と、ゆー訳で『
長門有希ちゃんの消失』のアニメ版を観た流れで『
星を継ぐもの』を読んだその流れで、その続編の『
ガニメデの優しい巨人』を読んだそのまた流れで、そのまた続編の『
巨人たちの星』を読みました。
・・・因みに、『巨人たちの星』は野球劇画
ではありません。SF小説
です。一応 念のため。 ^^;
この機会に『
巨人たちの星』についてのごく個人的な感想等をUPしておきたいと思います。
以下、やや
ネタバレあり、注意! であります。
この『巨人たちの星』で前作2本『星を継ぐもの』,『ガニメデの優しい巨人』において残されていた謎や伏線が全て解き明かされております。
前作2本も含めたこのシリーズの1つの完結編、或いは解決編,謎解き編といった感じの内容でした。
第20章においては、5万年前のコリエルのその後も明かされております。
このシリーズで『ガニメデの優しい巨人』までを読み終わっている人には、この『巨人たちの星』は鉄板でお薦め。
個人的には
第21章がこの物語の“ヘソ”にあたる要点かと思えました。
封建主義イデオロギーと
反知性主義に対する嫌悪と批判の描写には大いに共感させられます。
(各論においては作者の方とは2,3意見の異なる点が個人的にはありますが、総論においては概ね賛同いたします。)
現実世界ではSF小説ほどには物事は単純には解決できないでしょうが、現実世界や人間社会に今でもはびこっている封建主義イデオロギーや反知性主義等とそれらに起因する所の悪弊・因習は打破・払拭されなければ、支配階級以外の大勢の人々は決して報われないのであろうことをこの物語は警告しているのだと思います。
この一連の小説が発表されてから既に30年ほど経ちますが、人間社会は
冷戦構造を克服することは出来ましたが、支配階級の封建主義イデオロギーや彼らが社会に撒き散らす反知性主義を人間社会は未だに克服できてはおりません。
そして、それらを克服すれば人間社会は今よりも遥かに豊かに栄えるであろう未来図が、作者によって読者側に示されているのではないでしょうか。
希望に満ちた前向きな提言かと思います。
しかしながら、今日の我々日本人に即して言えば、状況はむしろ現政権によって寧ろ悪化させられているとも言えるでしょう。

反知性主義を撒き散らす封建主義イデオロギーの支配階級とその追従者達を権力の座から排除できなければ、その社会は一握りの支配階級だけが甘い汁を吸うだけの、貧しくて不幸で惨めな世の中になってしまうのではないでしょうか。

てゆーか、昨今の日本においては“某○○会議”なる団体こそが、この物語の第21章での作者の指摘にまんま当てハマっているような気がしたりして…? 決して気のせいなだけではないと思います。
個人的にはマイケル・ムーアの『シッコ』という映画の中での英国の元議員の話を思い出してしまいました。知性の高い国民は支配しにくいから、反知性主義を撒き散らして国民を愚かなままにさせておきたいのでしょう。
このSF小説『巨人たちの星』はそれらの点に警鐘を鳴らしているのだと思います。

SFな割には社会派で渋いです。個人的には超好み、であります。(^o^)
ある登場人物が作中での封建主義者の人脈と目論みを見抜くシーンがあります。
大事な所なので以下、少々長くなりますが引用文(色文字部分)を。
「(中略)。この人間関係はある共通のイデオロギーで括ることが出来る。封建主義だ」
(中略)
「支配階級を占める少数派は進歩によって何も得るところがない。歴史を通して支配階級が常に技術革新に反対の態度を取って来たのはそのためだ。変化が自分たちに利益をもたらす保障がない限り、彼らは腰を上げない。つまり、自分たちが利益を独占するなら進歩も結構というわけだね。(中略)」
(中略)
「二つの理念が対立しているんだ。一方に封建貴族がいて、もう一方に職人、技術屋、土木工事屋の共和主義がある。古代奴隷経済社会においても、教会が知識階級を弾圧した中世ヨーロッパにおいてもこれは同じ。イギリス帝国の植民地主義から、ひいては最近の、東側の共産主義や西側の資本主義に至るまで、この構造は連綿として変わらないんだ」
「ひたすら働かせろ。目的に殉じる気持ちにさせろ。ただし、考える閑は与えるな、か。え?」
(中略)
「教養があって、豊かで、精神的に開放された市民階級の出現を搾取階級は何よりも嫌うんだ。権力というのは富の規制と管理の上に成り立つものだからね。科学技術は無尽蔵の富をもたらす。故に科学技術は規制しなくてはならない。知識と理性は敵である。迷信とまやかしを武器とせよ」
以上、引用文終わり。
作中に登場するある封建主義者の支配階級は女をモノとしか見ておりません。
と言うよりも、彼らは自分たち支配階級以外の人間の全てを、心の底から“
モノ言う家畜”としか見なしていないのでしょう。

女を利用し見下しているある封建主義者が、女性たちの怒りを買って滅びて行きます。
「こいつ、何で腹を押さえているのかな?」「消化不良かと思われます、大佐」
“未来の『
地球太守』様”の下衆ぶりが、自業自得で痛快なのであります。
また他にも、敵国の国家元首の独裁者ぶりが
末期のヒトラーっぽくてゲラゲラ笑えます。てゆーか、名前からしてヒトラーのもじりっぽいよーな気も?
「おれのまわりは屑ばかりだ」等と側近達にあたり散らす場面が多々ありますが、「お前が屑だからだヨ」,「お前が屑だから優秀な側近でもクズ並みの能力しか発揮できねーんだヨ」とツッコミながら読んでしまいました。(^^)
この辺りの描写などは殆んどマンガのようなベタなギャグで、個人的には大いに“ツボ”でした。こんなヤツが上司だと命にも関わる大ごとですが、気○○゛いは遠くから眺めている分には他人事で済むので、非常に面白いと思います。(^0^)
このシリーズ3本の個人的な面白さや好みの順位としては
『
ガニメデの優しい巨人』>『
巨人たちの星』>『
星を継ぐもの』
とゆー感じであります。
この一連のシリーズ中では個人的には『ガニメデの優しい巨人』が最も面白いと感じました。
『ガニメデの優しい巨人』まで読み終えている人には『巨人たちの星』は鉄板でお薦めでありますが、
『巨人たちの星』については、
第21章に限ってはそれ以外の方々にも(特に学生さん,
理系に限らず寧ろ文系の学生さんにこそ)お薦めかと思えます。
このシリーズは『巨人たちの星』で一応の完結を見ておりますが、このシリーズには更に『
内なる宇宙』(上下巻)という続編もあるそうです。


『内なる宇宙』もそのうちにもし機会があれば追々読んで見るつもり。
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