洋画『
ルートヴィヒ』
(1972年,昭和47年)のデジタルリマスター版がGyaO!で期間限定の無料配信がされていたので、この機会にチェックした。長い。約4時間だったヨ。
日本での公開当時の邦題は『
ルートヴィヒ/神々の黄昏』だったのだそうです。
折角なのでこの機会にごく個人的な5段階評価&感想等を、あまりネタバレにならない程度に少々。
面白さ 3.5 前後
長さ 5.0 以上
お薦め度
歴ヲタの人 5.0
独ヲタの人 5.0
文系の学生さん 4.0
般ピーの人 3.0
バイエルン王国の
ルートヴィヒU世の国王としての約22年の在位期間の様子が、この映画では描かれております。
日本で言うと、幕末の慶応年間の辺りから明治20年の辺りの頃まで?
バイエルンのルートヴィヒU世という国王は、鴎外の小説『うたかたの記』のモデルの王でもあるようです。
世界史的なキーワードで言うと『
普墺戦争』や『
ドイツ統一』、人名で言うと『
ビスマルク』,『
ワーグナー』,『
エリザベート』等々が登場したり語られたりもしております。
「犯人探し」っぽい映画にも感じました。あの時代を生きた一人の国王の人生が描かれております。この映画の作り手達は、まだ解明されていない歴史上の謎に挑もうともしているのかも?
その意味では文系の学生さんにはお薦め度は高いのかと。
衣装やロケ地や調度品などは本当に素晴らしいのではありますが、デジタルリマスター版とは言え元が昔のフィルム映画なので、今時の感覚では今一つ発色等に物足りなさも感じました。
イタリア語(?)で演じるキャスト陣には知っている役者さんが一人もいませんでしたが、芝居が上手いだけではなくて、多分皆さん外見も似ているンだと思う。
ガンダム的には、『
ガイア・ギア』の最終決戦の地がこの映画の主な舞台にもなっているようなので、チェックして見ました。^^;
・・・ガンヲタでスミマセン。
個人的にはそれほど濃ゆい映画ヲタクではないので、
ヴィスコンティって誰だかおいらにはよくは判らないです。(・・;)
古い世代の方々にとっては、世界的にも有名な映画監督なのだそうですが、黒澤明やスピルバークと比べてどれくらいの位置づけな映画監督なのか?が個人的には判らないです。
あまりにも長すぎる映画なので、何日かに分けて観ることにしました。民放の1時間TVドラマで言うと、5,6話分のボリュームはあるのではないか?と。
もしおいらがこの映画を映画館で観たとしたら、面白いとかツマらないとかと言う以前に、長すぎて爆睡していたと思います。

(^^ゞ
・・・以下、この映画に描かれているルートヴィヒU世の人生についての感想等を少々。
ルートヴィヒは18歳でバイエルンの国王に即位しますが、今の日本で言えば、高卒で国王という職業に就職させられるようなものなのかと。
当時のバイエルン王国もある程度の
立憲君主制ではあったようですが、高卒相当の18歳の青年に国政を担わせて重責を一身に負わせるのは酷な話しだし、
逆差別にも感じます。
ごく全うに育った充分に健全な18歳の青年であっても、精神衛生上も決してよろしくなどはないでしょう。
楽隠居をカマしている遠縁の王族達がもしも何処かにいるのなら、そいつらを月毎に輪番の交替で摂政にでも立てて、18歳の青年には「たとえ国王や王太子であっても、学問を積ませてやれよ」とも一現代人的には感じてしまいました。
責任の重い玉座に就かせるのなら、尚のこと若いうちに学問を積ませて見識を広げさせるべきかと思います。
そうはさせなかったのは、貴族や政治家たちは、“扱いやすい王”を求めていたからではないでしょうか?
世間での評価では一般に『狂王』とか『偏執狂』とかとも言われているようですが、この映画を観る限りでは、充分に全うな青年として描かれております。ごく普通に全うな青年が、ごくごく自然に人間らしい反応を示しただけに過ぎないのではないか?とも感じます。
その彼を狂わせるだけの弊害が、当時のバイエルンの政治や社会の制度の側にもあるようにも感じます。
国王としての『戦争反対』,『芸術振興』の方針や信念は、今の時代にこそ相応しい国王像かとも思えます。
若いが故に海千山千の者達によって手玉に取られてしまいますが、それは学問や見識や人生経験,等々をまだ充分には積めてはいなかったからではないでしょうか?
今一つ財政観念に欠けていたのも、人生において若いうちに学業に専念の出来る期間が短かったからではないか?とも思えてしまいました。
また、無駄で無意味に厳し過ぎる戒律や禁欲は、健全な人間成長には寧ろ逆効果にも感じます。カタギの女を何人も泣かせるような王族では何処の国でも困りますが、極端な戒律や禁欲もかえってコワいです。何事も程々が良いのかとは思います。
日本や中国の時代劇で言うと、殿中や宮中での茶坊主や宦官に相当する立場の者が神父として宗教を背にして戒律や禁欲をまだ年の若い国王に過剰に強いるから、国王陛下がいろいろと拗らせて・・・、
いやいやあの神父としては自分の出来ることを誠意を持って精一杯に尽くしたつもりではあろうかとは・・・、以下、ネタバレになるのでココでは省略。
てゆーか、
封建主義体制の頂点に君臨する国王ですら幸せになれないと言うのなら、その
封建主義によって不自由や不平等を強いられる
封建社会の底辺にいる庶民や平民には、尚のこと幸せが遠い気がする。現代人の立場としては、封建社会の限界を感じます。
王族と言えども人間なんだから、必ずしも代々完璧で高潔な非の打ち所の全く無い人格であり続けることなど、土台ムリな話だと思います。
王族に生まれたと言う理由なだけで、代々必ず絶対に完全無欠な非の打ち所の全く無い名君であり続けることを無限に要求され続けるのであれは、それは逆差別というものだと思います。
立憲君主制なら、国王は普通に凡君でも、充分に名君たり得ると考えます。また、そのためにこその立憲君主制か?とも思います。
日本に引き付けて考えて見た場合、王制の一形態としての立憲君主制や象徴天皇制は(少なくとも相対的には)正しいと感じます。
個人的には共和制に一定の評価は認めますが、絶対の価値は特には感じてはおりません。
革命や共和制は、最悪のケースでは、新たな独裁の温床にもなり得るからです。
立憲君主制も、最悪のケースでは新たな軍事独裁に利用される事例がありますが、それでも一般的には新たな独裁の出現を封じる重しとしては理に適っているとも思えるからです。
現日本国は、地方自治においては事実上の大統領制,完全共和制が既に実現されております。各都道府県に国王や総督はいないし、市区町村には殿様やお代官さまなど今どき何処にもいないからです。
しかし中央の国政においては、皇帝の格に相当する天皇が併存する議院内閣制,象徴天皇制でもあります。
地方自治における完全共和制と国政における象徴天皇制との併存は、新たな独裁の出現を封じる仕組みとしては、実は割と良い組み合わせなのではないか?とも思えます。
何処の国でも、王族達が普通に全うな人間なら、なるべく長生きすべきです。王族に限らす、家や家族を思うのなら、人間はなるべく長生きするべきかと思います。そこに身分や階級は関係ないと感じます。
昔からよくある時代劇のような、跡目争いや覇権争いによる服毒合戦などになっては絶対になりません。庶民や平民もまた斯くの如し、と感じます。
この映画についても、そもそも王族達が健康でもう少し長生きなら、もっと穏やかな国政が期待できたのではないか?とも思えるからです。
この映画に描かれている内容は一般庶民のオイラにとっては大いに他人事ではありますが、国の単位で考えて見た場合には、必ずしも他人事ではないようにも思えます。
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