独.ORFEO D'OR C296 923D 3CD
極めて独逸的なフィガロである。それは収録年に起因するが、1957年当時の巨匠は、男性的な筋肉質の演奏スタイルだった。それは前途の「英雄の生涯」や「ツァラトウストラ」を聴いても判るが、巨匠は相手がモーツアルトであっても姿勢を変える事無く取り組んでいる。当然この演奏はウイーン風とは無縁である。しかし巨匠ならではの美点も勿論在る。それは歌手に歌い崩しを許さない厳格な姿勢である。その為、作品の美点を見失わない忠実な演奏となる。これはひとつの理想であるが節度も人其々で基準は無いが誇張は自己表現と見るのが定義であろう!作品に対して忠実であるのもひとつの解釈である。それは巨匠の音楽環境がそうさせたと見るのが順当であろう!これが若き日に影響を受けた新即物主義に対する証しである。しかしこの演奏は楽団の音色に助けられ特有の厳しい表情が和らいでいるのが救いかも知れない!歌手達のアンサンブルは絶妙と言って良く、特に不満は無い!エーリッヒ・クンツのフィガロも良いが、やや控えめなのが惜しい、イルムガルト・ゼーフリートのスザンナも同様だが、騒ぎ過ぎないのは作品に対してバランスを保っていると言えるだろう!伯爵夫人は、エリザベート・シュワルツコップである。この頃が全盛期と言えるが、ここでは艶が今ひとつなのが残念だ!ケルビーノは、クリスタ・ルードウィッヒである。表現力が素晴らしい!アルマヴィーヴァ伯爵は、ディートリッヒ・フィッシャー=デイスカウだ!流石に上手いが風格がもうひとつだ!マルツェリーナのジークリンデ・ワーグナーはまあまあ!演奏の水準は高いが、このメンバーなら更に上の演奏も可能だろう!フィガロとしては模範的な演奏だが、それ以上のものは無い!舞台は見れないので音だけの批評故厳しくなるのは御許し願いたい!
1957 Salzburger Festspiele

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