Polydor Japan MGW 5103 (独.DG 2544 053)
ベートーヴェンの第5交響曲です。運命と言う標題は日本だけでドイツ本国では無効です。しかし最近では逆に影響を受け通用するらしいです。何でも通俗化する日本恐るべしです。巨匠は全集以前にも交響曲を録音してましたが、これは発売当時に決定盤扱いされた演奏です。まだフルトヴェングラー在任中のベルリンフィルを振ったレコードです。収録は、1953年でした。その為か重厚かつ繊細なオケの音が聴けます。正にドイツのオーケストラを聴く醍醐味が在ります。格言動機がドッシリしてるのは勿論の事ですが、当時58歳の巨匠は、やはり若かったと言う事です。基本のテンポは速めに処理されてます。辺りを払う様な威厳は在りませんが勢いが在ります。響きが常に有機的なのも評価できます。リズムの歯切れも良く無駄の無い進行は新即物主義の面目たるやと言う感じがします。第2楽章は大きな風格は無いものの少しも浮つかない安定感のある音楽は安心して聴けます。第3楽章です。コントラバスの深い音は、当時のベルリンフィルならではです。落ち着いたテンポながら金管のフォルテシモは輝かしい!遅いながらも動的な演奏です。終楽章です。巨匠の音楽の特色は、この頃から明確に現れており、夢中に成り過ぎて造型を崩す事が在りません!そこを物足りないと思うかで評価が分かれるかも知れません!しかし堂々とした響きは、ここでも健在です。私は同曲のスタンダード的な演奏だと思います。尚このレコードにはカップリングされている曲が在ります。モーツアルトのセレナーデ第13番です。収録は、1956年とあります。第1楽章はセレナーデと言える哀愁は余り感じません!まるで交響曲を聴く様なスケール感があります。とても充実した演奏で安心して聴けます。弦楽器のセクションは綺麗です。勿論繊細な処も在り堅物な演奏では無いので、充分、モーツアルトを堪能出来ます。第2楽章が、その最たるものでしょう!第3楽章で背筋が伸びた印象を受けますが、ここで巨匠の造型感の確かさに感心します。そして終楽章も決して上滑りの無いしっかりとした足取りで曲を終えます。後年の特色が既に垣間見る事が出来る一枚と言えます。

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